「歌舞伎座スペシャルナイト」で『石橋』と『街の灯』

「歌舞伎座スペシャルナイト」で『石橋』と『街の灯』

 「歌舞伎座スペシャルナイト」『石橋』市川染五郎


 10月27日(月)、歌舞伎座で第27回東京国際映画祭プレゼンツ「歌舞伎座スペシャルナイト」が開催され、市川染五郎が歌舞伎舞踊『石橋(しゃっきょう)』を披露、映画『街の灯』が上映されました。

 日本が誇る国際的な映画祭として、27回目を迎えた東京国際映画祭。23日(木)に六本木ヒルズアリーナで華々しく幕を開けた今年の映画祭の目玉イベントの一つが、「歌舞伎座スペシャルナイト」です。開場とともに、歌舞伎座にはいつにもましてドレスアップしたお客様が続々と詰めかけ、スペシャルな夜に彩りを添えました。

 はじめに、映画祭のフェスティバル・ミューズ、中谷美紀さんが定式幕の前に登場し、「国内のみならず、世界に向けて映画文化を発信していく東京国際映画祭、楽しんで会場に通っていただければ」とご挨拶。着物を着て、ときには気軽な服装で歌舞伎座に通っていると言う中谷さんは、「今日は初めて観る『石橋』を楽しみにしております」と語り、十代の頃に何度も観た『街の灯』について聞かれると、「悲しい出来事を喜劇にして届けてくれるチャップリンは素晴らしい作家、俳優だと思う」と答えました。

「歌舞伎座スペシャルナイト」で『石橋』と『街の灯』

 続いて幕が上がって始まったのが、このイベントで歌舞伎と映画の架け橋ともなる、染五郎の歌舞伎舞踊『石橋』。勇壮な獅子の精の毛振りは外国のお客様の目をも釘づけにし、場内は拍手喝采に包まれました。

 染五郎は「今回は、皆さんのイメージする歌舞伎をお見せするのが一番と思い、隈取、歌舞伎音楽、見得などをとり入れた舞踊、しかも、最後は雪を降らせる中での毛振りという、歌舞伎独特の様式美もお見せできるので」と、この演目を選んだ理由を話しました。

 休憩をはさんで行われた染五郎のトークショーでは、進行の笠井信輔氏から毛振りについて聞かれた染五郎が、「毛を振る回数は決めていません。生身の人間がお見せするのですから、そのエネルギーを感じ、ライブ感を味わっていただくことが大事だと思います。下半身を使って全身で振ることによって、毛先まできれいに振れます。最後に息の上がった顔はお見せできないので、そこを我慢するのが大変です」など、踊り終えたばかりの『石橋』について、興味深い話を披露しました。

 また、歌舞伎座の楽屋で写された、曽祖父の七世松本幸四郎とチャップリンの写真を見ながら、「歌舞伎座新開場の月に、チャップリンのお孫さんと楽屋でお会いしました。同じ歌舞伎座で孫と曾孫がお会いできた…。特別なご縁があるんだな」というエピソードに続き、この後に上映される『街の灯』についても、「この映画から取材して、お馴染みの『切られ与三』の蝙蝠安に書き替えた歌舞伎が上演されたのですが、これをどうやったら再演できるか考えていました」と、作品に対する特別な思いについても語りました。

 そしていよいよ映画『街の灯』の上映。1931(昭和6)年公開のチャールズ・チャップリンのサイレント映画が、歌舞伎座の舞台に映し出されました。染五郎はイベント後の会見で、「12カ月歌舞伎をやっている歌舞伎の専門劇場で、このような歌舞伎と映画のイベントが開かれました。これを機に、ぜひ歌舞伎座に来ていただけたらうれしいです。通い慣れた歌舞伎座ですが、今日は景色が違って見えました。その違和感がうれしくて興奮しました」と、さまざまな縁がもたらした一夜が、いかに特別なものだったかを伝えてくれました。

 第27回東京国際映画祭は、10月31日(金)の東京グランプリ受賞作品上映まで、六本木、日本橋ほかの会場で開催。詳細は 東京国際映画祭の公式サイトをご覧ください。

「歌舞伎座スペシャルナイト」で『石橋』と『街の灯』

「歌舞伎座スペシャルナイト」第27回東京国際映画祭フェスティバル・ミューズの中谷美紀と市川染五郎

2014/10/27