「錦秋名古屋 顔見世」出演者が語る

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 10月3日(土)~25日(日)、日本特殊陶業市民会館「錦秋名古屋 顔見世」に出演する中村吉右衛門、中村歌六、中村芝雀、中村又五郎、中村錦之助が、製作発表会見に臨み、公演への思いを語りました。

名古屋に歌舞伎を絶やさないために
 吉右衛門が秀山十種の内『松浦の太鼓』と古典の名作『俊寛』に出演、新歌舞伎の『あんまと泥棒』、女方舞踊の代表的な一曲『藤娘』があり、舞踊『太刀盗人』、そして世話狂言の『浮世柄比翼稲妻』と、バラエティーに富んだ今年の「錦秋名古屋 顔見世」。歌舞伎の面白さが詰まった公演で、吉右衛門は、「初めてうかがう劇場ですが、どこへ行っても、皆様の胸に飛び込むような演技をすることには変わりがありません」と舞台にかける真摯な姿勢を見せました。

「錦秋名古屋 顔見世」出演者が語る

 「歌舞伎は庶民の中から出てきたものですから、難しいものではありません。江戸時代の話なので、言葉遣いが違ってわかりにくいことはあるかもしれませんが、わからないものではない。どなたにもわかってもらえるものと思ってやっております。構えずに見たままを受取っていただければありがたい」と、歌舞伎に馴染みのない人も含め、たくさんのお客様に顔見世にお越しいただきたいと語りかけました。

懐かしい御園座の思い出の数々
 出演者はそれぞれに、現在再建中の御園座には深い思い入れがあり、「養父の初代吉右衛門、実父の松本白鸚と三代にわたりお世話になりました」と吉右衛門が言うと、「私が生まれたとき、父(四世歌六)たち吉右衛門劇団は御園座に出演中でした」と歌六も続け、芝雀は「18歳のとき御園座からお城まで毎日歩いてやせることができ、女方の道を進むことになりました」といったエピソードを明かしました。

 又五郎は歌舞伎以外に、叔父の萬屋錦之介の公演でも出演しており、「前の御園座では襲名させてもいただきました。少しでも進歩している又五郎をお見せしたい」と意気込み、錦之助は「昔の御園座は泊まり込みができたので若いとき、公演中、一歩も外に出ませんでした。4役もある今回も、本当は劇場に泊まり込みたいくらい」と、懐かしい思い出の詰まった御園座が再建中の今だからこそ、この顔見世興行にかける思いはいっそう強まっているようです。

顔見世3年目となる日本特殊陶業市民会館
 この劇場は花道から揚幕に引込んだあと、楽屋までの距離が長いそうで、吉右衛門いわく「役の数は歳の順です、若いほど出番が多くなっています」とにっこり。又五郎と錦之助は夜の部は全幕に出演しますが、「たしか、花道も長かったと思います。『太刀盗人』では引込みが大変かもしれませんね」(又五郎)、「引込んだあとに『山三浪宅』の板付き(幕開き時に舞台上にいる)、間に合うかな」(錦之助)と言いながらも、「勉強したかった役が多々あって幸せ」(又五郎)と二人とも表情はうれしそう。

 吉右衛門よりひと役多い3役を勤める歌六は、幕開きの『あんまと泥棒』で、前回(平成3年6月歌舞伎座)とは逆のあんま役を演じます。「舞台装置をどうするか、これは劇場に入ってやってみないとわかりません」とのことですが、叔父の中村嘉葎雄や弟の又五郎、そして十七世勘三郎も勤めている、家に縁のある役への初挑戦となります。

 来年の五代目雀右衛門襲名を発表した芝雀には、「父から手に手を取って教わった記憶の残る『藤娘』」があります。今回の上演は、「節目節目で出させていただいた名古屋で、芝雀として最後の『藤娘』をさせていただけることはありがたい。一つの集大成としてここで踊るのは自分にとって意義深いことです。皆様に喜んでいただけるよう、精いっぱい勤めます」と、こちらも笑顔を見せました。

 「錦秋名古屋 顔見世」の会場、日本特殊陶業市民会館へは、名古屋駅から電車一本で金山駅へ、そこから地下道を通って雨に濡れずに行けます。この秋はぜひ、名古屋へ足をお運びください。

 公演は10月3日(土)から25日(日)まで。チケットは8月23日(日)より、チケットWeb松竹御園座ほかにて発売予定です。

「錦秋名古屋 顔見世」出演者が語る

2015/05/14