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吉右衛門が語る『河内山』『俊寛』

吉右衛門が語る『河内山』『俊寛』

 

 

 9月2日(日)から始まる歌舞伎座百三十年「秀山祭九月大歌舞伎」で、中村吉右衛門が出演する『河内山』『俊寛』について、そして秀山祭について語りました。

 初代中村吉右衛門の芸を伝えようと当代吉右衛門が続けてきた秀山祭も、区切りの10回を終えて今年は11回目。「一からまた始めよう、初心に戻ろうということで」、今回は初代吉右衛門五十回忌追善(平成15年9月歌舞伎座)で上演した『河内山』『俊寛』を見せます。「播磨屋ゆかりの演目で初代の芸を一から見直そうと」、吉右衛門があらためて意気込みを語りました。

 

秀山祭では最多3回目の『河内山』

 昼の部は『河内山』。黙阿弥が講談を元に書いた作品で、「(それを芝居として)立体的にお見せするわけでございますから、皆さんに喜んでもらって最後に溜飲を下げていただくもの。巨悪に対する庶民の味方の悪人の生きざまが描かれた作品です。自分が楽しんでやらなければいけません。野村萬さんが和楽の気持ちという言葉をおっしゃったのを聞き、私も和楽の気持ちで河内山をやらせていただけたらと思っております」。

 

 「初代はお客様によりわかっていただきたい、という気持ちから」、松江邸の場の前に「質見世」を上演しており、当代もそれにならっています。「質見世」から見せることで、河内山が屋敷に乗り込んでいくことになった経緯がわかり、「高僧に化けている面白さも感じていただけます。初代はもっと面白くやったとはわかっていますが、そこまでなかなか難しくてできませんけれど、少しでも近づけたらいいなと思いやっている次第でございます」。

 

吉右衛門が語る『河内山』『俊寛』

年齢を重ね、舞台を重ねてたどり着いた『俊寛』

 夜の部は俊寛僧都を演じます。「長らく上演されていなかったものを、初代があそこまでつくり上げた、練り上げた芝居。心理描写はとても現代的で、心の動きを大事にする型がついております」。あくまでも近松の書いた竹本を大事にすることが重要で、「三味線とのイキが合わないとできない型になっております。竹本さんに乗ってやる芝居で、踊りでなくても踊りのように体を動かしてやらなければならないところが、たいへん多うございます」。今回は前後で替わらず、太夫の第一人者の葵太夫が通して語ります。吉右衛門は「大変だと思いますが、とてもありがたい」と喜びました。

 

 初代は「魂で芝居をする人」と言い、「吉右衛門の魂がこもっている芝居。大切に、大切にやっていきたい」と、『俊寛』への思いが言葉を超えて伝わってきます。実父(初世白鸚)の教えを守りながら再演を重ね、自分の解釈で演じるところも生まれました。「俊寛が乗るは弘誓(ぐぜい=仏や菩薩が衆生救済を願い立てる誓い)の船、浮世の船には望みなし」と、妻を殺されて絶望した俊寛は、自分の替わりに島の娘を赦免船に乗せ、若い人に夢を託して島から船を見送りますが、「20年くらい前、客席の上のほうに弘誓の船じゃないかというものがふっと浮かんだんです」。

 

 「それがこの芝居にとても合った感情、俊寛の状態だと思いました。弘誓の船が来ることは、そのまま死んでいく意味にもつながります。幕が降りて俊寛は息絶え、解脱して昇天していくのではないかと思い、それからは、幕が閉まる寸前に(船を)見上げるようにしています。親父から教わった、最後は石のようになれとは違うんですが、私の解釈でやっています」

 

20回、30回と続けていきたい秀山祭

 「実父の年齢も初代の年齢も超え、こんなに長くやっていられるとは自分でも思っておりませんでしたが、初代の魂、向かいたかった階段は、一歩一歩昇れているのではないかと自負しております」。今こうしていられるのは「諸先輩のご指導のおかげ」と感謝しつつ、「自分が吉右衛門を継ぐのはどうかと悩んだこともあるけれど、どうにかこうにか名前を継いで、還暦を過ぎて思いついたのが秀山祭。今では生きがいなんてものじゃなく、生きている理由です」とにっこり。

 

 自分の芝居に対する姿勢を見て、初代の心構えが少しでもわかってもらえたらと願う吉右衛門。「破(やれ)蓮の動くを見てもせりふかな」の初代の句にも、「常に芝居」の心が表れていると言い、新作のことを考えながら浅草の仲見世を夫婦で歩いていて突然、大声で笑い出したという初代のエピソードを引き合いに出しました。「役者がそれだけ芝居に集中できたら幸せ、それくらい打ち込むことができる人は幸せ…。それが、初代の芝居に対する心構え、気構えだったと思います。これからも初代の仕事を次につなぐことと、実父から受け継いだものはお見せしていきたい」と、目を輝かせて締めくくりました。

 歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」は、9月2日(日)から26日(水)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で8月12日(日)発売予定です。

2018年08月11日

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