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幸四郎が語る、博多座「二月花形歌舞伎」

幸四郎が語る、博多座「二月花形歌舞伎」

 

 2月11日(木・祝)から始まる博多座「二月花形歌舞伎」に出演の松本幸四郎が、公演への思いを語りました。

お客様に楽しんでいただける劇場空間に

 博多座への出演は、父・松本白鸚と自身の襲名披露となった平成30(2018)年の「六月博多座大歌舞伎」以来、約3年ぶり。幸四郎は、福岡の美味しい食べ物に思いを馳せつつ、「毎回、博多座にうかがうときには言っているんですけれども、母の故郷が博多ですので、博多の血が半分入っている。第二の故郷だと思っています」とにっこり。「この時期、博多座で歌舞伎が上演できることは、本当にうれしいです」と、感慨深く話します。

 

 歌舞伎公演は、昨年の8月に歌舞伎座で再開して以降、各地の劇場で新型コロナウイルス感染症拡大防止対策を徹底しながら行われています。「今はお芝居を上演することに特化することで、公演ができていると思います。さまざまな安全対策を講じ、試行錯誤して、また舞台に立つことができました。今回の公演では、2つの部で3演目に出させていただきますが、これは8月の公演再開以来初めてのこと。何役も演じることができるうれしさを爆発させて、お客様に楽しんでいただける劇場空間にしたいと思います」。

 

幸四郎が語る、博多座「二月花形歌舞伎」

 

3役演じられる喜びを胸に

 昼の部で出演する『松浦の太鼓』について、「これは秀山十種という、曽祖父(初代中村吉右衛門)を代表する作品の一つ。本当に大好きな作品です」と切り出した幸四郎。せりふ劇に近い作品と説明しながら、「松浦侯は、思いをストレートに言わないけれども、繊細な感情の変化や心の葛藤を強く感じられる作品ではないかと思っています。一所懸命やっています、精一杯やっています、ということだけでは成り立たないお芝居ですので、どれだけ力を抜いて自分の感情を自由に動かせるか、松浦侯がもつ愛嬌をみせられるかにかかっている」と、熱く語ります。

 

 夜の部では2演目に出演する幸四郎。『松浦の太鼓』に続き忠臣蔵物で、大好きな作品と語る『御浜御殿綱豊卿』では、平成16(2004)年以来、2回目の綱豊卿を勤めます。「綱豊卿は、赤穂藩の行く末を心から案じている人でもありますが、立場ゆえの葛藤があると思います。真山青果劇ですので、これはまさにせりふ劇。ただ、歌舞伎の青果劇は、せりふだけのお芝居とはいえ、とても音楽的なんです。感情を、感情的にしゃべるだけではない、音楽的に感情を表現するという美しさもありますので、それを突き詰めていければと思っています」。

 

 『元禄花見踊』では、「二月花形歌舞伎」出演者が勢ぞろいしての華やかな舞踊劇をお見せします。「昔からある長唄の踊りですが、今回はとにかく賑やかに、派手につくりたい。2月の博多座、この一座ならではの『元禄花見踊』を新たに製作中です」と、構想を明かします。「音楽もそうですし、色彩も、衣裳や小道具などがとても華やか。この作品の世界観をスケールアップしてお見せしたい。博多座は舞台機構がビッグな劇場で、いろいろなものができる可能性があるので、とにかく派手で賑やかな作品を、と思っています」と強調しました。

 

幸四郎が語る、博多座「二月花形歌舞伎」

 

歌舞伎が大好きという思いを伝えたい

 昼の部序幕の『正札附根元草摺(しょうふだつきこんげんくさずり)』についても、「歌舞伎を観た感覚をよく味わえる作品で、華やかな踊りです。立役の曽我五郎、そして女方の舞鶴という、歌舞伎を観たことがない方もイメージできる歌舞伎作品ではないかと思っています」と紹介した幸四郎。今回上演される4演目について、「リアリズムな心理劇、でもある意味音楽的でもあり色彩的にも歌舞伎らしさがあるお芝居。そして華やかな舞踊。いろいろなタイプの歌舞伎をコンパクトに観ていただける演目立てになったのでは」と、アピールしました。

 

 「この一座はみんな歌舞伎が大好きです。上演の場が少なくなっていますが、これは致し方ないこと。歌舞伎の火を消さないためにも、演じ続けることが今必要なこと、できることだと思っています」。幸四郎はコロナ禍、配信専用の歌舞伎公演「図夢歌舞伎」にとり組むなど、新たな試みにも挑戦し続けてきました。「図夢歌舞伎を通して、もともとの舞台の魅力や特徴を見つめなおすきっかけにもなりました。映像としての歌舞伎の可能性も確信したので、舞台が再開してからも、劇場に観に来ていただく今まで通りの歌舞伎公演、映像としての歌舞伎、両方が存在し続けていってほしい」と、歌舞伎の未来を見据えます。

 

 「舞台では、生だからこそ感じられる魅力をしっかりとふまえて勤めたいです。これだけ歌舞伎が好きなんだという思い、前進している思いを、いかにお客様にお伝えできるか。観ていただいて、何かを感じていただけるような時間になれば」と、熱い思いを語りました。幸四郎を筆頭に、花形歌舞伎らしい、華やかで熱気あふれる舞台に期待がふくらみます。

 博多座「二月花形歌舞伎」は、2月11日(木・祝)から24日(水)までの公演。チケットは1月23日(土)から、博多座オンラインチケット、電話予約センター、劇場窓口ほかで、発売予定です。

 

2021/01/06