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歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」初日開幕

 

 2023年9月2日(土)、歌舞伎座「秀山祭九月歌舞伎」の初日が幕を開けました。

 初世中村吉右衛門の功績を顕彰し、その芸と精神を継承していくことを目的とする秀山祭。今年は秀山祭を牽引してきた二世中村吉右衛門の三回忌追善公演として、ゆかりの演目を上演します。

 

 昼の部は、『祇園祭礼信仰記』「金閣寺」から。二世吉右衛門は昭和41(1966)年の吉右衛門襲名披露で此下東吉を勤め、松永大膳も当り役としてきました。舞台は春爛漫の京都、金閣寺。「国崩し」と呼ばれる敵役の大膳(歌六)は、将軍を亡き者とし、将軍の母・慶寿院尼(福助)を幽閉、さらに雪姫(米吉・児太郎、日替り出演)も我が物にしようとしています。そこへ敵対する小田春永の家臣・東吉(勘九郎)が奉公を求めて現れます。天下をもくろむ大きさを見せる大膳と、知略に富んだ東吉。大膳と東吉は碁を打ち始め…。2日の初日は、「三姫」の一つである雪姫を初役の米吉が勤め、桜の花びらが舞い散るなか、爪先を使って奇跡を起こす通称“爪先鼠”と呼ばれる場面で盛り上がります。セリを使った演出も楽しい、豪華絢爛なひとときとなりました。

 

 続いては、新古演劇十種の内『土蜘』です。二世中村吉右衛門もたびたび勤めた叡山の僧智籌実は土蜘の精を、甥である幸四郎が初役で勤めます。病に伏せる源頼光(又五郎)の館を見舞う平井保昌(錦之助)と、薬を持参する侍女の胡蝶(魁春)。そして夜更けに忽然と姿を現すのは智籌と名のる叡山の僧。音もなく登場する様子が不気味さや異様さを際立たせ、さらに「畜生口の見得」で土蜘の精の本性を垣間見せます。番卒と巫女との滑稽な間狂言を挟み、本性を現してからの後半の立廻りも圧巻。千筋の糸を繰り出す土蜘の精は、名刀膝丸の威徳によって日本を魔界に変えようという大望が絶たれます。

 

 昼の部の締めくくりは「秀山十種」の一つ『二條城の清正』。“清正役者”とも呼ばれた初世吉右衛門が懇望し書き下ろされた本作は、昭和8(1933)年に初世吉右衛門の加藤清正で初演されました。幕が開き、夜の淀川を下る御座船に佇む加藤清正(白鸚)の第一声が劇場の空気を震わすと、一瞬にして作品の世界に引き込まれます。病を患いながらも豊臣家のために自らの命を懸けて秀頼を守る気概の清正と、聡明さと気品あふれる豊臣秀頼(染五郎)。豊臣家滅亡を図る徳川家康との二條城での対面を終え、御座船で大阪城へ向かっています。秀頼の成長を見守る清正の深い愛情、清正を“爺”と慕う秀頼の様子に、祖父と孫である白鸚と染五郎の姿が重なり、そのほとばしる熱量に、客席からは鳴りやまない大きな拍手が送られました。

 夜の部は、歌舞伎の様式美を凝縮した『菅原伝授手習鑑』「車引」で幕を開けます。今回は、初演時に二世吉右衛門から稽古を受けたと話す又五郎の松王丸、歌昇の梅王丸、種之助の桜丸と、親子三人で初めて三兄弟を勤めます。梅王丸の勇壮な荒事の演技と、桜丸の和事味ある柔らかな演技の対比も面白く、吉田神社の境内で敵である藤原時平(歌六)の乗る牛車に襲いかかる二人に対し、それを止める松王丸が大きさを、時平が超人的な力を見せます。梅王丸の豪快な飛び六方や、三兄弟がそろって見せる、錦絵のようなさまざまな見得など、歌舞伎の醍醐味たっぷりのひと幕となりました。

 

 続く『連獅子』は、能の「石橋」をもとにした長唄の舞踊です。今回は、狂言師右近後に親獅子の精を菊之助が、狂言師左近後に仔獅子の精を初役の丑之助が勤め、親子で初めての『連獅子』に挑みます。清涼山の麓の石橋に、狂言師右近と狂言師左近が手獅子を携えて現れ、親獅子と仔獅子の故事を丁寧な踊りで表現。親獅子の親心、仔獅子の健気さが菊之助、丑之助親子の姿と重なり、客席からは拍手が起きます。ユーモラスな間狂言の「宗論」を挟み、狂言師右近が白色の毛の親獅子の精、狂言師左近が赤色の毛の仔獅子の精へと姿を変えて現れ、獅子の親子が勇壮な毛振りを見せると、客席から割れんばかりの大きな拍手が巻き起こりました。

 

 夜の部最後は、義理と人情に厚い人々を描いた長谷川伸の傑作『一本刀土俵入』。今回は、二世吉右衛門が当り役とした駒形茂兵衛を幸四郎が勤めます。利根川沿いの取手の宿場で、通りがかりの喧嘩を収めた相撲取りの駒形茂兵衛。その様子を安孫子屋の二階から見ていた酌婦のお蔦(雀右衛門)は茂兵衛にあるだけの金品を与え、立派な横綱になるよう励まします。互いの素性と身の上を語り合う場面は、人の心の温かさを感じさせます。10年後、お蔦のもとに前半とは打って変わった渡世人の姿で登場する茂兵衛。横綱を夢見た男の一途な恩義を描き、幕切れの哀愁漂う長ぜりふまで、観る者の心に深い余韻を残し、劇場はさわやかな感動に包まれました。

歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」初日開幕

 

歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」初日開幕

 

 

 劇場内1階の大間には、二世中村吉右衛門三回忌追善の祭壇が飾られ、2階ロビーにはこれまでの「秀山祭」で二世吉右衛門が勤めた思い出の舞台の特別ポスターを展示。祭壇に手を合わせる姿や、懐かしそうにじっくりとポスターをご覧になるお客様の姿が見られました。 

 

歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」初日開幕

 

 歌舞伎座地下2階の木挽町広場では9月12日(火)から千穐楽まで、キャンディ製造パフォーマンスが楽しめる、人気キャンディショップの実演販売を開催いたします。ご観劇の際はぜひお立ち寄りください。

 歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」は25日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2023/09/11