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團十郎が語る、歌舞伎座「七月大歌舞伎」

團十郎が語る、歌舞伎座「七月大歌舞伎」

 

 2023年7月3日(月)から始まる歌舞伎座「七月大歌舞伎」夜の部『神明恵和合取組(かみのめぐみわごうのとりくみ)』、『鎌倉八幡宮静の法楽舞』に出演する市川團十郎が、公演に向けての思いを語りました。

 「七月大歌舞伎」夜の部では、『神霊矢口渡』に続き、江戸の鳶と力士の喧嘩を描く『神明恵和合取組』、通称「め組の喧嘩」、そして「九世市川團十郎歿後百二十年」と銘打ち新歌舞伎十八番の『鎌倉八幡宮静の法楽舞』を上演。團十郎は、「め組の喧嘩」で鳶頭のめ組辰五郎を勤め、『鎌倉八幡宮静の法楽舞』ではさまざまな役を踊り分けます。

 

ぐっとこらえる男の色気

 「め組の喧嘩」で、團十郎がめ組辰五郎を演じるのは、当代團十郎が初めてです。「音羽屋のおじさん(尾上菊五郎)が辰五郎、父(十二世團十郎)が四ツ車大八の舞台に出演させていただいたこともありました。また、若い頃に鳶の役を勤めたこともあり、とにかく楽しく、この演目が出たら皆盛り上がって活気がつくという印象が残っています」と、過去の舞台を懐かしみます。今回は、市川新之助も若い鳶で出演することが決まっています。

 

 辰五郎について、「喧嘩の発端となる場面でぐっとこらえている。男として収めないといけないけれど収まらない、という様子に、なんとも言えない色気を感じていました」。辰五郎が兄貴分の喜三郎を訪ね、命がけの喧嘩に向かう決心を固めていく「喜三郎内の場」は、その後のドラマの成立に必要な場面だと言います。「喧嘩に行くと腹を決めた辰五郎が、家族の前で酔っ払ったダメな人のふりをして過ごす姿は、格好良くチャーミングで、江戸っ子らしい。私は好きですね」と、辰五郎の人物像を表現しました。

 

 喧嘩を題材にした芝居は珍しいと話す團十郎。「鳶と力士が、お互い我慢をし続けた挙げ句に喧嘩をしていく。江戸っ子たちが、どのように生きて、どのように揉めて、またその喧嘩をどのように収めたか、そういった江戸の風情や喧嘩のルールのようなもの、男たちの生きざまがわかりやすく、みどころの一つになるのではないでしょうか」。

 

團十郎が語る、歌舞伎座「七月大歌舞伎」

 

新しい工夫を加えた『静の法楽舞』

 平成30(2018)年1月の新橋演舞場で復活させた『鎌倉八幡宮静の法楽舞』。「元の『静の法楽舞』は、シンプルな舞踊劇だったようです。今、新歌舞伎十八番のなかでは、『鏡獅子』や『紅葉狩』のように完成された作品が残っている。それに匹敵する作品として、物語や、四代目、七代目の團十郎のようなケレン味を加えた舞台を復活したいと思いました」と、前回の公演を振り返ります。

 

 今回、それぞれ3役を踊り分ける市川ぼたんと新之助。「最後に化生となった自分を二人に押戻してもらおうと思っています。せりふも工夫し、お客様に楽しんでいただける趣向になればと思います」と、新たな構想も明かされました。また、河東節、常磐津、清元、竹本、長唄囃子と、5種類の音楽が使われる点も本作の眼目です。「日本の音楽の違いや多様性を聴いて、楽しんでいただけたらうれしいですね」。

 

 改めて、歌舞伎座7月の夜の部については、「『神霊矢口渡』で時代物をお届けし、『め組の喧嘩』の世話物で、一致団結して戦う姿をご覧いただく。最後は楽しい『鎌倉八幡宮静の法楽舞』で、帰路についていただけるような構成です」と、その魅力を伝えました。

 歌舞伎座「七月大歌舞伎」は7月3日(月)から28日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2023/06/16