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山田洋次演出『文七元結物語』、10月歌舞伎座で上演決定

山田洋次演出『文七元結物語』、10月歌舞伎座で上演決定

 山田洋次

 2023年10月歌舞伎座「錦秋十月大歌舞伎」で、山田洋次演出による『文七元結物語』の上演が発表されました。

 「文七元結」は、幕末から明治にかけて活躍した落語家の三遊亭圓朝が口演した人情噺で、歌舞伎では、明治35(1902)年歌舞伎座で五世尾上菊五郎が初演して以来の人気作です。落語をこよなく愛し、「“文七元結”は落語として屈指」と話す山田は、十八世中村勘三郎からの熱いリクエストを受けて、平成19(2007)年10月新橋演舞場『人情噺文七元結』の補綴を手がけ、シネマ歌舞伎版の監督をつとめました。その後も再演を重ね、好評を博しています。

 

 腕のよい左官の長兵衛は博打に溺れ、女房のお兼と夫婦喧嘩が絶えない貧乏暮らし。それを見兼ねた親孝行の娘お久は、吉原の廓・角海老に奉公を決意。娘が身売りしてつくった50両の金を大事に懐にしまうその帰り道、若い男が吾妻橋から身投げしようとするのを見た長兵衛は、懐の50両をその文七という若者にくれてしまい…。江戸の市井に生きる人々の心の機微を描き出した人情噺の傑作です。

 

山田洋次演出『文七元結物語』、10月歌舞伎座で上演決定

 中村獅童(左)と寺島しのぶ(右、©資人導)

脚本・演出を一新、「歌舞伎座に芝居を観に来た人を楽しませたい」

 このたびの上演では、山田の新たな構想により脚本・演出を一新して、これまでの『人情噺文七元結』とはまた違った魅力を放つ『文七元結物語』が誕生します。「女房も呆れてしまうくらいダメな男と、ダメな男に惚れてしまった女。笑いのある舞台で、歌舞伎座に芝居を観に来た人を楽しませたい」と、歌舞伎座初演出への意気込みを見せ、左官長兵衛に中村獅童、長兵衛女房お兼に寺島しのぶを指名。さらに、小間物屋の近江屋卯兵衛に坂東彌十郎、角海老女将お駒に片岡孝太郎と、山田たっての希望による理想的なキャスティングでの上演に期待がふくらみます。

 

 歌舞伎座の歌舞伎興行では、数々の名優と共演した初代水谷八重子の舞台や、二世尾上松緑と山田五十鈴が共演した『シラノ・ド・ベルジュラック』、初代尾上辰之助(三世松緑)と新劇の鈴木光枝が共演した『楢山節考』など、歌舞伎俳優と女優が共演した名演が知られています。また、『文七元結』の長兵衛娘お久の役は女優が演じることも多く、歌舞伎座では波乃久里子が13歳と22歳のときに演じ、長兵衛女房お兼の役は初代藤間紫が昭和43(1968)年の御園座で演じた例もあります。

 

 9月1日(金)に、映画「こんにちは、母さん」の公開を控える山田洋次が贈る、10月歌舞伎座の『文七元結物語』、中村獅童と寺島しのぶの共演にどうぞご期待ください。

 

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歌舞伎座「錦秋十月大歌舞伎」

『文七元結物語』

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左官長兵衛:中村獅童

長兵衛女房お兼:寺島しのぶ

近江屋手代文七:坂東新悟

長兵衛娘お久:中村玉太郎

角海老女将お駒:片岡孝太郎

近江屋卯兵衛:坂東彌十郎

2023/07/18