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時蔵、芝翫、梅枝が語る、歌舞伎座『鎌倉三代記』

時蔵、芝翫、梅枝が語る、歌舞伎座『鎌倉三代記』

 

 2023年11月2日(木)から始まる歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」夜の部『鎌倉三代記』に出演の中村時蔵、中村芝翫、中村梅枝が、公演への思いを語りました。

 大坂夏の陣を題材にした重厚な時代物の名作、『鎌倉三代記』。時蔵と梅枝は親子それぞれ初役で三浦之助義村と時姫を、芝翫は今回で3度目の佐々木高綱を勤めます。

 

時蔵、芝翫、梅枝が語る、歌舞伎座『鎌倉三代記』

 

役への思い

 「時姫を早くもう一度やりたいと思っていましたが、まさか自分が三浦之助を演じることになるとは。今回初めて三浦之助を勤めさせていただくこと、大変喜んでおります」と、笑顔を見せる時蔵。「50年前に、杉の子会という勉強会で(『鎌倉三代記』を)3日間だけやり、それ以降この狂言には縁がありませんでしたので、新しい気持ちで初役を勤めたいと思っています。今回は(中村)梅玉のお兄さんに教わりますので、それを忠実に守っていきたい」と、語ります。

 

 芝翫はこれまで自身が出演した『鎌倉三代記』の公演を思い返し、「(平成7年の)初演時は、背の届かないプールで立ち泳ぎをしているような、足搔きもままならずという気持ちでした。(平成19年に)三浦之助を勤めさせていただいた際には、違う視点からこの『鎌倉三代記』を見ることができ、自分に足りない部分を見つけることができました」と、当時の様子を明かします。「高綱はほんのいいところにしか出て来ないのですが、肚(はら)のある大きな役で、大変に楽しいお役。時蔵のお兄さんと同様に僕も古典を大事にしてきましたので、しっかりと後輩たちに残していくつもりで、勤めさせていただきたいと思います」と、思いを口にします。

 

 歌舞伎の時代物に登場する姫役のなかで難役とされる「三姫」のうちの一人、時姫を勤める梅枝。「姫役のなかでは非常に大きな役で、時姫をこの歳で演せていただけるとは夢にも思っておらず、大変ありがたいとともに、戦々恐々としているところです。重厚な義太夫狂言に私がどこまで太刀打ちできるのか、不安でいっぱいです」と率直な思いを述べながらも、「先輩方の胸を借りて、命の限り燃えつきたい。(時姫の)三浦之助への思いがしっかりとお客様に伝わるように勤めたいと思います」と、力強く意気込みます。

 

時蔵、芝翫、梅枝が語る、歌舞伎座『鎌倉三代記』

 

義太夫狂言の名作『鎌倉三代記』

 『鎌倉三代記』の登場人物はそれぞれにモデルが実在し、三浦之助義村は木村重成、佐々木高綱は真田幸村、時姫は千姫であると言われています。時蔵は、「史実上では絶対あり得ないものでも、歌舞伎の物語としてご覧になると楽しいと思います。歴史上の知っている名前が出てきた方が身近に感じますし、それぞれの登場人物のことがわかってくると面白いのでは」と、古典作品を観るうえでのおもしろさを話します。芝翫は、「絹川村閑居の場と言いながら、最初の三浦之助と時姫の場面が一幕目、富田六郎と藤三郎の(井戸に逃げ込み、槍に突かれる)場面が二幕目、そして大詰が始まるという、この場だけで複数の幕で構成されているように思っています」と、説明。「登場人物たちの深いドラマに着目して観ていただけたらうれしいです」と、作品の眼目を伝えます。

 

時蔵、芝翫、梅枝が語る、歌舞伎座『鎌倉三代記』

 

 また、会見では大役に挑む梅枝に向けて時蔵と芝翫からエールが送られるひと幕も。芝翫は、「僕のような立役としては、(六世中村)歌右衛門のおじや、お父様の時蔵のお兄さんのような、大立者の女方になってほしいと思っている。すごく期待が“大”」と、太鼓判を押す仕草をしながら梅枝へ温かな眼差しを見せます。続けて時蔵も、「義太夫狂言は役者にとっての基本でありながら、でもすごく難しい。ただそれをやることによって初役でもそれなりのことができるのだと思います。彼もいろいろと経験していますし、私もしっかりと教えますので、形になるのでは」と、期待を込めました。

 

 先輩二人からの熱い思いを受け止めた梅枝は、「古典に出させていただく機会が多いと自分でも自覚していますし、古典を背負っていく自覚はあるつもりです」と、真剣な面持ちで決意をにじませました。

 歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」は11月2日(木)から25日(土)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

 

時蔵、芝翫、梅枝が語る、歌舞伎座『鎌倉三代記』

 

2023/10/27