一、松本幸四郎 監修 歌舞伎噺
―楽しい歌舞伎への誘い―
歌舞伎の世界に皆様をご案内する一幕です。歌舞伎の始まりからその歴史的変遷を、当時の人物を登場させながら、わかりやすく解説するとともに、歌舞伎という演劇を特徴付けているさまざまな要素、荒事と和事、歌舞伎十八番、歌舞伎舞踊、歌舞伎音楽などを実演を交えてご説明いたします。
日本人が生み出し発展させてきた歌舞伎が、これまで以上に身近で、楽しいものと感じていただけるようになるでしょう。
二、吉原雀(よしわらすずめ)
明和5年(1768)江戸市村座で上演された顔見世狂言「男山弓勢競(おとこやまゆんぜいくらべ)」の大切(最終部分)に初演された桜田治助作詞、富士田吉治作曲の長唄の舞踊。
舞台は江戸の廓(くるわ)吉原の仲之町。やってきた男と女は放生会をしに来た鳥売りの夫婦連れ。
吉原はいつ来ても賑やかで、華やか。鳥売りの夫婦もつい浮かれ、吉原の賑わいや、客と花魁のかけひきを語って聞かせます。廓遊びの華やかさを菊や紅葉に例え、男は粋に女は艶っぽく語ります。
人がうらやむほど睦(むつ)まじい夫婦は、ひとしきり話をし、放生会が終わると二人ながらに鳥籠を肩に担いで帰っていきます。
三、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)
天保11年(1840)に七代目市川團十郎が初演した作品で、作者は三世並木五瓶、作曲は四世杵屋六三郎、振付は四世西川扇蔵。歌舞伎十八番の内のひとつで、能(のう)『安宅(あたか)』を素材に能舞台を模した松羽目(まつばめ)で演じられます。
兄頼朝に追われる義経は、奥州めざして逃亡の旅を続けています。途中加賀の国安宅の関所に着いた義経主従は、無事通過するためにひと芝居打ち、諸国勧進の山伏と偽って関所を通り抜けようとしますが、関守の富樫左衛門に止められます。機転を利かせた弁慶が白紙の巻物を勧進帳として取り出し朗々と読み上げ、富樫の問いにもよどむことなく答えます。しかし、うまく切り抜けたように見えたのもつかの間、義経が見とがめられてしまうので、弁慶は疑いを晴らすために心を鬼にして主君を金剛杖で打ちすえます。この様子を見て全てを悟った富樫は、主従の関所通過を許し、もてなした上に見送るのでした。
義経主従の花道の出、勧進帳の読み上げ、弁慶と富樫の山伏問答、富樫の呼び止めから押し合い、義経の弁慶へのねぎらい、弁慶の延年(えんねん)の舞いから最後の飛び六法(ろっぽう)まで、全編が緊迫感あふれる見せ場の連続です。