みどころ


歌舞伎座

十二月大歌舞伎

平成19年12月2日(日)~26日(水)


昼の部

一、鎌倉三代記(かまくらさんだいき)

  絹川村閑居の場
 北条時政との戦いで、劣勢を余儀なくされている源頼家の家臣・三浦之助(橋之助)は、絹川村に住む老いた母長門(秀調)のもとへ、暇乞いに訪れます。出迎えたのは、時政の娘ながら三浦之助の許嫁の時姫(福助)。気丈に息子との対面を拒む長門とは対照的に、夫となる人をかき口説きますが、三浦之助は、敵方となった姫に心を許しません。そんな時姫を呼び戻そうとやって来たのは、時政方の足軽・安達藤三郎(三津五郎)。しつこく時姫に言い寄り、姫に斬りかかられて逃げ出す始末ですが、実は、その正体は佐々木高綱。三浦之助と共謀し、時姫に父時政を討たせようという魂胆だったのです。
 おどけた前半から、ガラリと変わり勇将の本性を顕す高綱、前髪の美しい美少年・三浦之助、彼を必死に恋い慕うけなげな時姫。いずれも絵になり見せ場に富む、濃厚な味わいの義太夫狂言です。

二、信濃路紅葉鬼揃(しなのじもみじのおにぞろい)

 信濃の戸隠山を通りかかった平維茂(海老蔵)と従者(右近・猿弥)を紅葉狩りに誘う、美しい上臈(玉三郎)と侍女たち(門之助・吉弥・笑也・笑三郎・春猿)。酒に酔ってまどろむ維茂のもとに、山神(勘太郎)が訪れ、上臈たちの本性を告げて、直ちに逃げるよう促します。間もなく鬼女に豹変した上臈と侍女一行が現れ、維茂たちに襲いかかります。
 能の『紅葉狩』を歌舞伎化した舞踊劇で、今回は構成も新たになりました。華やかで迫力に富む一幕となることでしょう。

三、水天宮利生深川(すいてんぐうめぐみのふかがわ)

  筆屋幸兵衛

  浄瑠璃「風狂川辺の芽柳」
 直参だった船津幸兵衛(勘三郎)は、明治維新により没落士族となり、今は筆を売って細々と暮らしています。妻に先立たれ、目の不自由な娘お雪をはじめ、三人の子供を抱えた生活は苦しく、高利貸しの金兵衛(猿弥)や代言人の茂栗安蔵(彌十郎)の取り立てに、身ぐるみ剥がされてしまう始末。もはやこれまでと一家心中を決意した幸兵衛は、切っ先を向けた子供たちを前に、ついに辛さあまって発狂してしまいます。
 暴れる幸兵衛を、車夫の三五郎(橋之助)がなだめるところへ、剣術家の萩原良作の妻おむら(福助)が訪ねてきて、乳呑み子の幸太郎に乳を与えようとすると、幸兵衛は幸太郎を奪い返し、そのまま外へ駆け出し身投げしてしまいます。野次馬が囲む中、巡査民尾保守(獅童)の調べに応じているのは、命を取り留め、正気に戻った幸兵衛。これも水天宮様の御利益と、みなは喜び合います。
 明治十八年に初演された河竹黙阿弥の「散切物」の代表作で、あまりの悲惨さに気がふれてゆく、幸兵衛の凄絶な演技がみどころ。十七代目勘三郎の当たり役に、当代勘三郎が満を持して初挑戦します。



夜の部

一、菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)

  寺子屋

 菅丞相の家臣・武部源蔵(海老蔵)は、妻の戸浪(勘太郎)と寺子屋を営みながら、主人の子菅秀才をかくまっています。それを知った敵の藤原時平は、菅秀才の首を出すよう命じ、臣下の松王丸(勘三郎)を首実検に差し向けます。源蔵は苦悩の末、今日、母の千代(福助)に連れられ寺入りした小太郎を身替わりにします。実はこの子の親こそ、松王丸。心ならずも敵方に与する松王丸の、これは命を賭けた償いの行動だったのです。
 わが子を犠牲にする松王丸夫妻の慟哭と、他人の子を殺さざるを得なかった、源蔵夫妻の宮仕えのつらさ。胸を打つ義太夫狂言の名作です。

二、粟餅(あわもち)

 威勢よく現れたのは、二人組の粟餅売りの杵造(三津五郎)と臼造(橋之助)。搗きたての粟餅をちぎっては、粉が入った鉢に投げ入れる曲搗きを見せたり、交互に六歌仙を演じ分けたりと、きびきび軽やかに踊ります。
 江戸時代、曲搗きで知られた粟餅売りの風俗を写した常磐津舞踊。踊り巧者、三津五郎と橋之助の息の合った組み合わせが楽しみです。

三、ふるあめりかに袖はぬらさじ

  (ふるあめりかにそではぬらさじ)

 文久元年(一八六一)。江戸幕府が開港した三港のうちのひとつ、横浜にある遊郭岩亀楼には、外国人相手の「唐人口」と呼ばれる遊女もいて、連日賑わっています。気風がよく三味線の名手でもあるお園(玉三郎)は、ここ岩亀楼の名物芸者。面倒見のいいお園は、病に伏せっている同僚の遊女亀遊(七之助)を見舞いに行き、亀遊と、医者を目指す通辞の藤吉(獅童)との仲に気づきます。
 その翌年。岩亀楼に登楼したアメリカ人イルウス(彌十郎)は、唐人口の遊女マリア(福助)を気に入らず、病み上がりの亀遊に一目惚れして、藤吉に身請け話の通訳をさせます。金に目の眩んだ岩亀楼の主人(勘三郎)が身請けを承知すると、藤吉との恋に絶望した亀遊はその場を飛び出し、自害してしまいます。
 その七十五日後。亀遊の死を、〝万金を積まれてもアメリカ人への身請けを断り自害した攘夷女郎〟と事実を歪曲して伝える瓦版が出回ります。「露をだにいとふ倭の女郎花ふるあめりかに袖はぬらさじ」というウソの辞世の句まで添えられている周到さは、攘夷派志士を煽るためのねつ造に違いありません。が、この瓦版のお蔭で評判になった岩亀楼では、商売促進に励む主人はもとより、亀遊の死の真実を知るお園までもが、ウソで塗り固められた「亀遊物語」の語り部となってゆきます...。
 玉三郎の当たり役のお園に、一座勢揃いの顔ぶれによる注目の舞台。今回は初の歌舞伎座での上演です。

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