昼の部
一、歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)
小野春道の屋敷では、家宝である小野小町の短冊が盗み出された上、姫君錦の前は、髪の毛が逆立つという奇病にかかり、婚約者文屋豊秀との婚礼が先延ばしになっていました。そこへ文屋豊秀の家臣粂寺弾正が来訪します。ひとりでに動く毛抜から事の真相を突き止めた弾正は、悪人から小町の短冊も取り戻し、悠々と屋敷を後にするのでした。
歌舞伎十八番の一つであるこの作品で、
獅童が豪快な荒事の演技の中にもおおらかさを持った主人公を演じます。
二、鷺娘(さぎむすめ)
冬枯れた川辺に娘が一人立ちつくしています。舞い落ちる雪に濡れたこの娘は人間の恋に迷い悩む白鷺の精の姿でした。白無垢の孤独な姿から、愛らしい町娘に姿を変え、恋に夢中な乙女ごころを切々と舞い、華やかな踊りを繰り広げます。いつしか白鷺の姿となり、感情の高まりとともに踊りも速くなり、力尽きて息絶え絶えとなります。
長唄の名曲に乗せて、美しい娘の様々な姿を満喫できる舞踊の傑作で、引き抜きやぶっ返りにより効果的に心情を表します。
女方の美しさを極めたこの作品を
七之助の初役でご覧いただきます。
三、女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)
油を商う河内屋の次男・与兵衛は、放蕩三昧で喧嘩沙汰ばかり起こしています。また、借金の返済に困り親から金を巻き上げようとしますが、とうとう家を追い出されてしまいます。そこで与兵衛は、同業の豊嶋屋の女房、お吉に頼ろうと店を訪れたところ、偶然お吉を訪れていた自分の両親の慈愛あふれる心を知ります。もう親に迷惑はかけられないと思った与兵衛は、お吉に不義になって金を貸して欲しいと迫りますが、断られてしまい・・・。
近松門左衛門が描く、現代にも通じる若者の心理や親の情、殺しの場面など見どころの多い世話物の名作で、
愛之助が与兵衛を、お吉を
亀治郎が勤める舞台です。
夜の部
一、吹雪峠(ふぶきとうげ)
猛吹雪に閉ざされた山小屋へやっとの思いで辿り着いたのは商人姿の助蔵とおえんです。今は夫婦になっているこの二人ですが、おえんはもとは助蔵が無頼漢だった頃の兄貴分、直吉の女房だった女。密通の末駆け落ちして、今は世をしのぶ二人であり、いつも直吉へのおびえがつきまとっています。ところが、こともあろうにその直吉がこの山小屋へやってきます。まさかの偶然に恐れおののく二人でしたが・・・。
極限に追い詰められた三人の心理描写がみどころの新歌舞伎を、
愛之助の直吉、
獅童の助蔵、
七之助のおえんと、いずれも初役で演じます。
二、源平布引滝 実盛物語(さねもりものがたり)
平家の侍でありながら、源氏に心を寄せる斎藤実盛は、木曽義賢の妻葵御前が身ごもっていることを聞いて、腹中の子が男か女かを瀬尾十郎と共に詮議に来ます。実盛は一計を案じ葵御前が生んだのは女の腕だと告げて瀬尾を帰し、葵御前は無事男の子、のちの義仲を生みます。
情智を兼ね備えた武将の役の鬘の名称から、"生締もの"と言われる作品の代表作です。荒唐無稽な要素が多いながらも、理屈を離れて歌舞伎のおもしろさが堪能できる作品です。
勘太郎が初役の実盛を颯爽と演じ、
男女蔵が瀬尾十郎、
亀鶴が葵御前を勤めます。
三、蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)
源頼光の館では病に伏せる源頼光を守護して坂田金時と碓井貞光が宿直(とのい)をしています。そこに頼光の命を狙う女郎蜘蛛の精が、お茶を運ぶ女童、薬売り、番頭新造、仙台浄瑠璃を語る座頭、と次々に姿を変えて現れ、ついには傾城薄雲太夫となって頼光の寝所に忍び入ります。宿直の二人が詰め寄ると、千筋の糸を投げかけ、姿を消すので、頼光らは後を追います。
能の『土蜘』を題材とした変化舞踊の一つで、古風でありながらも視覚的な面白さを充分に堪能できる作品です。
亀治郎が鮮やかな六変化を見せ、
勘太郎の頼光に相対します。花形七人が勢揃いして賑やかな打ち出しとなります。