大阪松竹座
團菊祭五月大歌舞伎
平成22年 5月4日(火・祝)~28日(金)
昼の部
一、摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)
毒酒を飲まされて醜い顔となってしまった高安城主の嫡男・俊徳丸(しゅんとくまる)は、許嫁の浅香姫と共に、継母の玉手御前の父・合邦道心の庵室に匿われています。そこへ、俊徳丸に恋慕の情を抱く玉手がやって来て、両親が諌めるのも聞かずに俊徳丸をかき口説き、浅香姫へ凄まじい嫉妬を見せます。見かねた合邦は遂に娘である玉手を刺してしまいます。苦しい息の下で玉手は、本心を打ち明けるのでした。
なさぬ仲の俊徳丸に邪恋を抱く継母の玉手御前という特異なテーマが、能の『弱法師(よろぼし)』や説教の『愛護若(あいごのわか)』などの系譜をひいた作品で、登場人物の主体的な行動が描きこまれたドラマ性の高い演目です。
二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)
都落ちを余儀なくされた源義経一行は、武蔵坊弁慶ら家来と共に、強力や山伏に身をやつして奥州へと向かいます。さしかかった安宅の関で、関守の富樫左衛門に詮議を受けるところ、富樫の問いにも弁慶は淀みなく答え、一行は通行を許されますが、番卒の一人が義経に似ていると気付き、呼び止められます。そこで弁慶は、義経を金剛杖で打擲します。
疑いを晴らす為、あえて主君である義経を打擲した弁慶の姿に心を打たれた富樫は、義経一行と覚りながらも通行を許すのでした。
成田屋の家の芸「歌舞伎十八番」の一つ。一行の出から、勧進帳の読み上げ、山伏問答、延年の舞、引っ込みの飛び六方まで見どころも多く、特に人気の高い演目です。
三、天衣紛上野初花
河内山(こうちやま)
悪巧みに長けた御数寄屋(すきや)坊主の河内山宗俊は、上州屋の娘ふじが腰元浪路として奉公している松江家に幽閉されていることを聞きつけ、手付けに百両、成功報酬としてさらに百両で、娘を連れ戻すことを請け負います。翌日、上野寛永寺の使僧を装った宗俊は、松江家を訪れ、当主の松江出雲守と直談判の末、浪路を連れ戻すことに成功します。ところがその帰りがけに、北村大膳に正体を見破られてしまい...。
悪党ながらも人物の大きさ、色気や愛嬌も備えた河内山宗俊。胸のすくような七五調の名台詞も聞きどころです。
夜の部
一、本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)
十種香武田信玄の嫡男・勝頼は、足利将軍暗殺の真犯人を探し出すことができず、許嫁である長尾謙信の息女・八重垣姫と一度も顔を合わせることのないまま切腹。八重垣姫が十種の香を焚いて勝頼の菩提を弔っていると、勝頼と瓜二つの花作りの簑作が現れます。驚いた八重垣姫は腰元の濡衣に恋の仲立ちを頼みますが、実はこの男こそ本物の勝頼で、切腹した勝頼は、身代わりとなった濡衣の夫だったのです。八重垣姫が勝頼への思いを滔々と語るところへ、館の主・長尾謙信が現れ、簑作へ出発を促します。すでに簑作の正体を覚っていた謙信は、勝頼を亡き者にしようと追手を差し向けるのでした。
全五段の義太夫狂言『本朝廿四孝』の四段目に当たる「十種香」は、錦絵のような華麗な美が堪能できる名作。深窓の姫君である八重垣姫は歌舞伎の"三姫"の一つに数えられる華やかな大役です。
二、銘作左小刀
京人形(きょうにんぎょう)
廓で見初めた美しい傾城に生き写しの京人形を彫り上げた名匠・左甚五郎が、それを相手に酒宴の真似事を始めるところ、不思議なことに人形がひとりでに動き出します。女の魂と言われる鏡を人形の懐に入れると、しとやかな女らしい動きに、鏡が懐から落ちると、人形は元の荒々しい動きに戻ります。京人形の可憐な踊りから、後半は一転して、甚五郎が大工姿の捕手たちを相手に、大工道具を使って左手だけで鮮やかに立廻りを見せる、見どころの多い舞踊劇です。
三、梅雨小袖昔八丈
髪結新三(かみゆいしんざ)
材木屋白子屋では、一人娘お熊の縁談がまとまり、結納の品が取り交わされますが、お熊は手代の忠七と恋仲であるため、縁談を了承しません。それを聞いていた小悪党の髪結新三は、忠七にお熊との駆け落ちをそそのかした上、途中で忠七を蹴倒してお熊を監禁し、身代金をせしめようと企みます。騙されたことに気づき面目なさに大川に身投げをしようとする忠七を、通りかかった侠客の弥太五郎源七が助けます。源七は白子屋からの依頼でお熊を取り戻そうとしますが、逆に新三にやり込められてしまいます。次に家主の長兵衛が乗り出し、老猾な掛け合いでお熊を救い出しますが...。
初鰹やほととぎすなどのほか、台詞の随所にも季節感が溢れ、威勢の良い江戸の市井の風俗を生き生きと描いた河竹黙阿弥の代表作。
音羽屋の家の芸で、江戸歌舞伎の粋を存分にご堪能いただく世話物の傑作です。
