その他の公演
博多座開場10周年記念
錦秋花形歌舞伎
通し狂言 雷神不動北山櫻
市川海老蔵五役相勤め申し候
平成21年10月2日(金)~26日(月)
【あらすじ】
早雲王子(はやくものおうじ:海老蔵)は、時の帝の皇子としてこの世に生を受けた。しかし、陰陽師の安倍清行(あべのきよゆき: 海老蔵)は、早雲王子が帝位に就けば天下が乱れると占い、早雲王子は帝になることが出来ず、陽成天皇(ようぜいてんのう)が即位したが、陽成天皇は、本来は女子として生まれるところ、女子を男子に変える「変成男子(へんじょうなんし)」の行法によって男子として生まれた人物で、その行法を行ったのが高僧の鳴神上人(なるかみしょうにん:海老蔵)であった。
こうした経緯から、帝位を逃したことを恨みに思う早雲王子は、陰謀を用い、帝位を望み、天下を奪おうとする。その陰謀に乗せられた鳴神上人が、龍神を北山の滝壺に封じ込めてしまったので、世の中は旱魃(かんばつ)に見舞われてしまう。そこで、朝廷では、小野家に伝わる「ことわりや」の短冊を用い、雨乞いの儀式を行おうとするが、この宝の短冊も、早雲王子の一味に奪われてしまう。しかし、文屋豊秀(ぶんやのとよひで)の家臣の粂寺弾正(くめでらだんじょう:海老蔵)の働きによって、小野家に蔓延(はびこ)る悪臣たちが除かれ、短冊は無事に戻る。
一方、勅命を受けた雲の絶間姫(くものたえまのひめ)は、鳴神上人の庵へと赴き、酒色を用いて、鳴神上人から行法の秘密を聞き出し、その呪術を破って龍神を解き放ったため、人々が待ち望んでいた雨が降り出す。こうして、早雲王子の陰謀はことごとく露見。
ここへ不動明王(ふどうみょうおう:海老蔵)が降臨し、早雲王子の悪心、また、術を破られ、生きながらにして雷となった鳴神上人の執念を鎮め、世は再び平穏を取り戻す。
【みどころ】
『雷神不動北山櫻』は寛保2年(1742)、二代目市川團十郎によって大阪で初演された。大当たりを取った後、長らく上演が途絶えていたが、明治42年(1909)に二代目市川左團次が『毛抜』を復活。続いて『鳴神』『不動』の復活にも取り組み、昭和42年(1967)、海老蔵の大叔父に当たる二代目尾上松緑が『雷神不動北山櫻』として久々に通しで上演して話題を呼んだ。13年前には同じ台本を使って、当代團十郎も通し上演を試みている。
今までの成果をもとに昨年、新たな視点と創意を加えてつくられたのが海老蔵版。
今年4月の名古屋・御園座での再演を経てさらに練り上げられ、三演目となる博多座公演には一層の期待が寄せられている。 一番の見ものは何といっても海老蔵の一人五役だろう。荒事らしいおおらかな明るさを振りまく粂寺弾正、純朴で一途な鳴神上人、どっしりとした存在感が生きる不動明王。父祖伝来の三役に加え、本作では悪の魅力が輝く早雲王子、おっとりとしたおかしみの漂う陰陽師・安倍清行、さらに幕開きでは「口上」も勤める。色合いの異なった役をどう演じ分けるか、成長著しい花形役者だけに興味が尽きない。
また、歌舞伎十八番を軸に膨大な物語を巧みにつないだ今井豊茂の脚本、早替わりや立ち廻り、空中浮遊といったケレンを盛りこみ、起伏に富んだスピーディーな舞台に仕立てた奈河彰輔の演出、藤間勘十郎の振付・演出にも注目したい。
