昼の部
一、南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)
江戸時代の文豪曲亭馬琴の長編小説が原作。房州滝田の城主、里見義実の息女伏姫と愛犬八房の不思議な結合から生まれた八犬士が、里見家再興を目指します。今回上演の「芳流閣の場」では、八犬士の犬塚信乃と犬飼現八が互いに素性を知らぬまま対決し、「利根川の場」では八犬士が勢揃いします。
大がかりな舞台機構を使った大屋根の立廻り、暗闇の中で争う様子を描くだんまりと様式美溢れる一幕です。
二、一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)
檜垣・奥殿
平家全盛の世、源義朝の妻であった常盤御前ですが、清盛の命により今では一條大蔵卿の妻となっています。曲舞にうつつをぬかし阿呆と評判の大蔵卿。源氏の忠臣吉岡鬼次郎とその妻お京は大蔵卿の館に潜り込みます。そこで常盤の楊弓に興じる様を目の当たりにし、堪えかねた鬼次郎が意見すると、常盤の胸に秘めた平家調伏の想いが明らかになります。そして、先ほどの阿呆ぶりとは打って変わった大蔵卿が現れて、「源氏再興」の想いを明かします。
大蔵卿の本性を隠した作り阿呆と、颯爽とした貴公子姿の演じ分けが眼目の時代物の名作をご堪能下さい。

裃姿の俳優が舞台に並び、この度襲名披露する新又五郎、新歌昇が皆様にご挨拶申し上げる一幕です。
四、寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)
曽我十郎、五郎が父の仇である工藤祐経を討ち果たした〝曽我兄弟の仇討〟は、謡曲をはじめ浄瑠璃、歌舞伎などに取り上げられています。将軍源頼朝の信任が厚い祐経の館では、巻狩りの総奉行就任の祝宴が執り行われる中、曽我十郎、五郎の兄弟が対面を願い出ます。実はこの兄弟は十八年前、祐経が闇討ちにした河津三郎の遺児でした。仇を討とうと逸る五郎は、祐経に詰め寄りますが十郎が押し止めます。祐経は兄弟に巻狩りの通行切手を与え再会を約束するのでした。
歌舞伎の様式美が見事に凝縮された顔見世に相応しい一幕です。
夜の部
一、双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)
角力場
人気力士濡髪長五郎と素人力士の放駒長吉の達引と侠気を描いた『双蝶々曲輪日記』の二段目。大坂堀江の角力小屋では濡髪と放駒の取り組みがありますが、大関の濡髪はあっけなく敗れてしまいます。濡髪は、自分を贔屓にしてくれる山崎与五郎と新町の遊女吾妻との仲を取り結ぼうとしてわざと負けたのでした。濡髪に怒りをあらわにする放駒。濡髪も、手にした茶碗を握りつぶし、力を見せつけ喧嘩別れになります。
どっしりとした貫禄の濡髪と活きの良さが際立つ放駒の二人の役柄の対称の妙をご覧いただきます。
二、棒しばり(ぼうしばり)
大名の屋敷に仕える召使いの太郎冠者と次郎冠者は、主人の留守にいつも酒を盗み飲んでいます。このことを忌々しく思う主人は一計を案じて二人を縄で縛り、意気揚々と出かけていきます。一方は後ろ手に縛られ、一方は両手を棒に縛りつけられた不自由な格好ながらも器用に工夫して酒を飲みだす始末。次第に酔っぱらい、浮かれ出して、ついには連れ舞に興じます。
狂言の作品を題材とし、ユーモラスな内容と賑やかな雰囲気のなかにも「松羽目物」の品格を漂わせる一幕です。
三、歌舞伎十八番の内 助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)
賑わう吉原仲之町。江戸一番の色男花川戸助六は夜ごとに吉原で喧嘩に明け暮れています。実は助六は曽我五郎で、相手に喧嘩をふきかけて源氏の重宝友切丸を詮議しています。助六の恋人揚巻に執心の髭の意休へ悪態をつき刀を抜かせようとしますが、相手にされません。助六の様子を案じる兄の新兵衛は喧嘩に耽る様子を意見しますが、刀詮議のためとの真意を知ると一緒に喧嘩を始めます。やがて意休の刀が目当ての友切丸であると知った助六は意休の帰りを待ち受けます。
歌舞伎十八番のひとつで、江戸歌舞伎を代表する作品です。