歌舞伎いろは
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。


鴨治さんの道具箱
鴨治さんの道具箱には、さまざまな柘植(つげ)の櫛が納められている。立役の髷の部分をなでつけるようにしてとかすための専用の櫛、お手製の道具など珍しいものもたくさんあった。


いい仕事は、目立たぬように

 一般に床山の仕事は、立役と女方に分かれてそれぞれを専門としています。東京鴨治床山株式会社は主に立役を扱っていますが、鴨治さんは両方を担当する稀有な存在です。

「一人前の床山になるにはさまざまな努力が必要ですが、経験を積もうという前向きな姿勢が一番大事だと思いますよ。それから、裏方という仕事は目立ってはだめなんですね。鬘がよかった、なんて言われたら失敗。大道具、小道具、衣裳、音楽など、いろんな要素がみんな溶け合ったとき、はじめていい舞台になると思います」
 取材中、「私は恵まれていますよ」と何度もおしゃっていた鴨治さん。つらい時期もあったはずですが、どんな仕事も楽しみながら己の糧とし、感謝して取り組まれてきたことが話のはしばしからうかがわれました。働き方の是非が問われる現代。鴨治さんの生き方は、ひとつの規範を体現されているようにみえました。

 歌舞伎の裏方の仕事は、目立たないところで地道に努力を重ね、緻密な進化を遂げています。こうしたよりよいものを生みだそうとする精神は、いろいろな分野で私たちの生活を陰から支えています。それは、生活の中心となる住まいづくりにおいても例外ではありません。私たちの生活は快適な住まいがあってこそのもの。そんな快適な住まいの空間づくりも進化を遂げています。

 従来の日本の住宅は、暑い夏を涼しく過ごすことを重視した住まいづくりでしたが、冷暖房機器が普及した現在の住まいづくりの基本は、高気密・高断熱です。高気密・高断熱住宅は、冬暖かく夏涼しい高性能住宅。寒い冬でも熱が逃げにくく、夏は快適で省エネルギーな空間を実現することができます。快適な反面、結露や室内の空気質には今まで以上の配慮が必要となりますが、そんな高気密・高断熱住宅は「オール電化」と相性がぴったり。オール電化住宅は、暖房や調理器具からの燃焼ガスや水蒸気の排出がないため、室内の空気を常にクリーンに保つことができるのです。
 冷え込みの厳しい季節は、暖房が欠かせません。より快適にそして安全にあたたかな生活ができる、さまざまな暖房システム、暖房器具が開発されています。

 みなさんは、蓄熱式電気暖房器をご存じでしょうか。これは、割安な夜間の電気を使って、蓄熱体に熱を蓄え、昼間に放熱するという火を使わないクリーンで経済的な暖房器。輻射熱と自然対流による暖房で、一日中、やさしい暖かさが続き、まるで暖炉のよう。寒冷地では、普及率も高く、新しい暖房機として注目を集めています。そして、おなじみのエアコンでは、技術の進歩で暖房性能が高くなり、最新タイプのものだと素早くパワフルに部屋を暖めることができるようになりました。また、省エネルギー性能も年々向上し、快適性も光熱費も満足できるものになりました。これらの暖房器具はいずれも火を使わないため空気を汚さず、高気密・高断熱の住宅との相性も抜群。リビング、寝室、子ども部屋など、各部屋の特性に応じた暖房器具を賢く選んで、心も身体もお財布も、ほくほくと暖かい冬をお過ごしください。


鴨治歳一さんの手
鴨治歳一さんの手。昭和13年生まれ。さらりと着た縞の着物に商売道具の元結(もっとい:髪を束ねるのに用いる紙でできた紐のようなもの)で、たすき掛けした姿がなんとも粋だった。