歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



足袋づくりの仕事場拝見

 日本文化の象徴ともいえる足袋ですが、昨今では中国などの海外で大量生産された廉価品もよく目にするようになりました。大野屋總本店の足袋は、もちろん手作り。店舗のある建物の2階が作業場です。急な階段をよいしょと上ってみると、なつかしい黒ミシンがずらり。ダダダッというミシンの音がこぎみよく響いています。

 足袋作りは流れ作業。素人目には、同じように見えるミシンも、それぞれの工程で使い勝手がいいように改造してあるそうです。一番難しい工程は、爪付け(つまつけ)。親指と4本指を包む入り組んだ部分を立体的に、シワにならないように縫わなくてはなりません。珍しい形のミシンを手際よく動かして、あっという間に縫い上げるさまは、魔法のようです。

 福島康雄さんの奥さま・恭子さんもここでミシンに向かっています。足の甲の合わせ目を縫う、<甲前縫い(こうまえぬい)>とこはぜの下のかかとを留める<尻止め(しりどめ)>を担当。「甲の部分は力がかかりますから、他よりも太い糸で2度縫いするんですよ。かかとの部分も脱ぎ履きなどで縫い目に負担がきますから、補強をするんです。尻止めの形はうちは円形ですが、店によって形が違うんですよ」と、手際よく実演しながら、説明してくださいました。

福島恭子さん。「お嫁に来たころは、かけ糸の糸を撚る作業からはじめたのよ」。

こはぜをひっかける糸<かけ糸>は、機械縫いが多いそうだが、こちらでは糸を撚って、手縫いで付けている。

縫い終えたらそれぞれの木型を入れ、形を整える。 木型のつやが長年使われてきたことを物語っている。


歌舞伎の逸品

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