
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。

賢い足袋の選び方、扱い方

既製品の足袋の幅の種類は、細、柳、梅、牡丹の4種類。靴を脱いで足を見せると、康雄さんが「柳でしょうね」とすぐに判断。見本の足袋を試し履きしてみると、ぴったりだった。
大野屋總本店では、既成品とおあつらえの足袋を一般にも販売しています。既成品は、たとえば23.5センチでも巾の大きさによって、4種類が用意されています。また、おあつらえは型紙を作ってもらい、キャラコ、麻、ネルなど布地を自由に選ぶことができます。
こはぜの数もいろいろ選べますが、どんな風に選べばいいのでしょうか。「昔は、女の人の足は細くて小さいのがよしとされていたんですね。こはぜの数は一般的には4枚ですが、5枚とか6枚の足首の長い足袋だと、足が小さく見えます。ですから踊りをされる方は好まれますね。お茶をされるなど長時間正座する方は、こはぜが少ないほうが、しびれにくいですから4枚がいいようですよ」と、康雄さん。

長男の福島茂雄さん。20代後半から家業を継いでいる頼もしい後継者。「うちの足袋は、底の幅を細くして、上をふわっと包み込むような形にしています。舞踊などで、足を上げたときに、細く見えるようにという配慮もありますね」

こはぜには、店名、足のサイズなどが刻まれているが、一番上は無地となっている。ここに自分の名前を刻印してもらうこともできる(無料。既製品、おあつらえ、どちらでも可能。既製品の場合は大野屋總本店で直接購入された場合に限る)。
お手入れで気を付けることは? 「足袋は、洗濯しているとどうしても底の部分が縮んできます。生乾きのときに、底の布をぎゅっと引っぱっておくといいですよ」と、アドバイスをくださった。
大野屋總本店の足袋をはいてみると、脱ぎ履きも楽で足にさらりとなじむ。歌舞伎に活かされている技が詰まった逸品に、思わず心が躍ります。
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おあつらえは、最低5足から。店で採寸し、見本を1足作ってもらい試し履きをする。注文から納品まで、1カ月くらいが目安。 |
歌舞伎の逸品
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