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七之助『ETERNAL CHIKAMATSU』東京公演開幕

七之助『ETERNAL CHIKAMATSU』東京公演開幕

 『ETERNAL CHIKAMATSU』 左より、深津絵里、中村七之助(撮影:岸隆子[Studio Elenish])

 3月10日(木)、東京 Bunkamuraシアターコクーンで、中村七之助が出演する舞台『ETERNAL CHIKAMATSU』東京公演が開幕、それに先立ち、前日に舞台稽古が公開されました。

 「ETERNAL CHIKAMATSU  -近松門左衛門『心中天網島』-」は、2月29日(月)、大阪の梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて初日を迎え、3月6日(日)までの公演を終えて東京公演の開幕となります。歌舞伎でも『河庄』『時雨の炬燵』でお馴染みの近松の作、『心中天網島』に、演出家デヴィッド・ルヴォーのアイディアをとり入れ、谷賢一が書き下ろした作品です。

 

 現代の売春宿から始まる舞台、ですが、近松の作品を現代に置き換えているわけではありません。我が身を憂い、未来に光を見出せない売春婦のハル(深津絵里)は、たしかに『河庄』の小春と同じく、好きな男の兄(音尾琢真)に弟と手を切るよう迫られます。しかし、行き詰ってさまよい歩いた末にたどり着いた一本の橋、そこで、妻子ある治兵衛と起請文を取りかわす深い仲の遊女小春(七之助)に出会い、言葉を交わします。

 

 現代の売春婦ハルは江戸の遊女小春を、まるで自分を見るようだと感じ、死に向かう小春に激しく問いかけます。治兵衛の妻、おさん(伊藤歩)にも詰め寄ります。夫と心中することのないよう小春に文を出しながら、夫と別れた小春が一人死ぬ気だと気付くと、自分の着物を売り払ってでも身請けをさせようと夫を送り出すおさんが理解できない、と。ハルは、心中物を書いてご見物を喜ばせるジジイ(中嶋しゅう)にさえ噛みついていきます。そんなに心中が美しいものか、と。

 

七之助『ETERNAL CHIKAMATSU』東京公演開幕

 『ETERNAL CHIKAMATSU』 左より、中村七之助、深津絵里(撮影:岸隆子[Studio Elenish])

 七之助の小春は、衣裳や化粧こそ歌舞伎とは異なりますが、女方の所作、声で、近松の世界に生きる遊女を演じます。その小春が、現代を生きるハルと、時代も何もかも超えて力強く語り合うところに、芝居の面白さが凝縮されています。

 

 死、愛、義理、女、普遍的なモチーフが、いくつもの刺激的なフレーズによって語られますが、決して近松の原作から離れていないところに驚かされます。

 

 原作の「道行名残の橋づくし」と同じく、この芝居でも橋は象徴的に使われており、シンプルな動く平台によって、形を変え、方向を変えて表現されます。小春と治兵衛が渡る橋は、追い詰められた二人が、夫婦になることを誓ったあの世へ渡る橋。来世への橋に立ちはだかるハルは、小春をこの世にとどめ、遊女が涙を流すことのない世にと願います。

 

 時空を超えるというより、物語の虚と実さえも軽々と行き来しながらも、見る側が迷うことなく芝居に引き込まれる作と演出の手腕は鮮やか。最後の一瞬までハルと小春から目が離せません。七之助の加役も要注目。本格的な現代劇は初挑戦という七之助の舞台です。

 

七之助『ETERNAL CHIKAMATSU』東京公演開幕

 『ETERNAL CHIKAMATSU』 左より、中村七之助、中島歩、深津絵里

  (撮影:岸隆子[Studio Elenish])

 

 

「ETERNAL CHIKAMATSU  -近松門左衛門『心中天網島』-」東京公演公式サイト

2016年03月10日

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