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七之助、梅枝が語るコクーン歌舞伎『切られの与三』

七之助、梅枝が語るコクーン歌舞伎『切られの与三』

 渋谷・コクーン歌舞伎 第十六弾『切られの与三』 左より、木ノ下裕一(補綴)、中村梅枝、中村七之助、串田和美(演出・美術)

 

 

 5月9日(水)~31日(木)、渋谷・コクーン歌舞伎 第十六弾『切られの与三』に出演の中村七之助、中村梅枝が、演出・美術の串田和美、補綴の木ノ下裕一とともに、作品について語りました。

七之助、梅枝が語るコクーン歌舞伎『切られの与三』

やりたいと願っていた『与話情浮名横櫛』

 若い頃に歌舞伎座で見た十一世團十郎の切られ与三郎が「格好いいな、と思ったのがずっと頭にあった」と明かした串田。原作の『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)』を今回、念願かなってコクーン歌舞伎で上演するうえで、「原作とはちょっと違うぞと匂わせたくて」、『切られの与三』にしたと語りました。

 

 「瀬川如皐の原作はあまりに長くて、そのとおりに上演されたことはないくらい。でも、捨てられたなかにも、面白いものがあったりするのではないか。書き換えられた台本は、そのときの時代や世相が感じられます。そろそろ新しいものがあってもいいんじゃないかと」。人による見方や角度で物語もずいぶん変わるところがあり、さらに、「同じものでも表現が違うもの、長い話ですから見ていないところもずいぶんあるんじゃないでしょうか」と語る串田が、さまざまな意味で、新たな与三郎とお富の物語を誕生させます。

 

七之助、梅枝が語るコクーン歌舞伎『切られの与三』

与三郎の傷が持つ意味

 木更津海岸見染と源氏店のみの上演が多い演目ですが、「実は、源氏店の後がものすごく長い。与三郎が傷を負って生き抜き、逃げる。まるで長い歴史のようでもあり、ほんの短い時でもあるような…。いろんなものが詰まっているように読み取れます」。補綴にあたる木ノ下は、串田の「遠い昔の関係ない話でなく、私たちの話にしたい」という言葉に共感したと言います。そのモチーフとして木ノ下が挙げたのが“傷”。与三郎の34カ所のあの傷です。

 

 「与三郎が傷を負い、流転していく長い芝居ですが、“傷”は痕跡でもあり、記憶が眠るものでもあります。傷を見ているお客さんが思いを馳せ、自分たちの傷ってなんだろうと思っていただければ。原作には町や環境、社会が変わっていくなか、取り残された与三郎のイメージもあります。また、喉元過ぎればではありませんが、傷は意外と忘れられやすい。社会全体の傷を与三郎が負っているという読み方ができる内容になればいいなと思います」。

 

七之助、梅枝が語るコクーン歌舞伎『切られの与三』

女方二人が見せる与三郎とお富

 普段は女方の七之助が与三郎。「立役は手探り、不慣れでございます。私なりにいいものに」と謙虚に語った七之助。「これまでとはまったく違う与三郎像にはなるのですが、先人たちの残してくださった思いは、どこか肚(はら)にしまってやらないといけないと痛感しています」。立役なら誰もがやりたい役の一つであることにも意味を見出しています。

 

七之助、梅枝が語るコクーン歌舞伎『切られの与三』

 4年前の南座でお富を勤めたことのある梅枝は、2度目のお富となりますが、「一から、精神的、内面的なものからつくり上げていければと思っています。女方の先輩である七之助の兄さんに教えをいただき、兄さんにない僕のよいところも、たぶんあると思っているので、そこが相手役としてうまくはまっていければ」と意欲を見せました。

 

 まだまだ台本も未完成で稽古も始まったばかりですが、「お富は出てくるたびに違う女性像になっていて、与三郎を本気で好きだけれど、気持ちに一貫性があるほうがいいのか悪いのか…。ひと言でいうと、性悪な女のつくりにしようかと、今のところは思っています」。磨き上げられた古典の形から入らず、お富の気持ちからとアプローチを変えている様子をうかがわせました。

 

わらないコクーン歌舞伎の熱量

 歌舞伎を現代演劇につくり直して上演している木ノ下は、小学生のときコクーン歌舞伎の稽古場レポートを雑誌で見て興味を持ったと言います。「2002年の大阪で平成中村座の串田監督演出の『法界坊』と、『夏祭浪花鑑』を通しで観た翌日、熱を出して寝込んだほど感動しました。(串田演出の)古典に出てくる人々と現代人が地続きになっている、手触りがあるところに感動しております」。今回は死ぬ気で頑張る、と気合を込めました。

 

 勘三郎が亡くなってから「対話の相手が必要だな、次の人たちと一緒にやっていきたいなと思っていて、今、芝居を、世の中を見て一緒に考えていける相手として、木ノ下さんに期待している」と語った串田は、さっそく喧々諤々やっていますと笑顔を見せました。

 

 今年で25年目を迎えるコクーン歌舞伎。七之助は、いろいろ変わってきていると思う反面、「最初にコクーン歌舞伎を立ち上げたときの熱量は変わりません。皆にしみついている魂があり、稽古場に入った時点で、スイッチが切り替わり、目の色が変わる。これは串田監督がつくり上げてくれたものです。そして、皆の意見を聞き、試す。楽しい稽古場です」と、積み上げてきた時間に自信を持って力強く語りました。 

 Bunkamuraシアターコクーン『切られの与三』は、5月9日(水)から31日(木)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹ほか、Bunkamuraチケットセンター、オンラインチケットMY Bunkamuraで販売中です。

 

七之助、梅枝が語るコクーン歌舞伎『切られの与三』

 渋谷・コクーン歌舞伎 第十六弾『切られの与三』 左より、中野哲夫株式会社東急文化村社長、木ノ下裕一(補綴)、中村梅枝、中村七之助、串田和美(演出・美術)、安孫子正松竹株式会社副社長

2018年04月13日

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