ニュース

白鸚、幸四郎が語る大阪松竹座「七月大歌舞伎」

白鸚、幸四郎が語る大阪松竹座「七月大歌舞伎」

 7月3日(火)に初日を迎える大阪松竹座「七月大歌舞伎」で襲名披露する二代目松本白鸚、十代目松本幸四郎が、公演に向けての思いを語りました。

代々の当り役を受け継ぐ『河内山』

 昼の部、白鸚の襲名披露狂言は『河内山』。河内山宗俊は「母方の祖父、初代吉右衛門の当り役」で、若い頃から何度も勤めています。「世の中のもやもや、むしむしとした暑さ、気を晴らしていただくように、河内山が啖呵を切ります。むしゃくしゃしたことがあったら、どうぞ7月の大阪松竹座へ」と、ご来場を呼びかけました。

 

 河内山は「悪人である、という以外は私そのもの」と、ひとかたならぬ思いを見せた白鸚。「たかが芝居、されど芝居。舞台の上だけは本音が言えるんです。河内山のせりふも本気で、芝居だからこそ言える。芝居には幕開きから終幕まで“虚”が続くなか、間にパッと“実”が、お客様が総毛立つような箇所があるんです」。虚と実の間に芸があるという近松門左衛門とは違う、「これは白鸚さんの虚実皮膜論」とユーモアを交えて思いの強さを表しました。

 

いつもこれが最後だという気持ちで臨む『勧進帳』

 「僕の富樫のイメージは叔父(吉右衛門)。それをお客様に見ていただくうれしさ、そこで弁慶を勤めるうれしさ」があったのが1月の『勧進帳』。幸四郎は、「初役(平成26年11月歌舞伎座)よりも苦しかった。大変な役、苦しい役だと感じるにも時間がかかるんだと、知った月でもありました」。3度目の今回は仁左衛門の富樫で、「正面から剛速球を投げるつもりで、全力でぶつかりたい」。一回一回、これが最後だという気持ちで勤めていると明かしました。

 

白鸚、幸四郎が語る大阪松竹座「七月大歌舞伎」

 今は、「十代目幸四郎の器に、染五郎時代ではない弁慶の芸を盛んに詰め込んでいるところ。名を譲った者としてはうれしく、頼もしく感じましたし、何年か後には出て来ただけで弁慶だ、となってほしい。歌舞伎が好き、踊りが好きなことにかけては舌を巻きます。それが舞台の上で実を結び、幸四郎の歌舞伎ではなく、幸四郎が歌舞伎をつくってほしい」と、白鸚はエールを送りました。

 

幸四郎が大阪で『女殺油地獄』をやることの意味

 「大阪で与兵衛をやるのは、僕の『油地獄』の最終目標でございました」と、幸四郎が背水の陣をしいて臨む『女殺油地獄』。監修の仁左衛門には、「もちろん気持ちがないとだめだけれど、どこをとってもきれいに見えなくてはいけない、感情的なところもきちんとした音でせりふを言わなくてはいけない、と気づかされました。教えていただいたことをただするのではなく、自分だったらどう感じるかと考えて役をとらえることも」。

 

白鸚、幸四郎が語る大阪松竹座「七月大歌舞伎」

 与兵衛は、「その時その時を本当に生きている。瞬間瞬間を自分に正直に生きている」、そういう人間を演じる魅力を幸四郎は感じています。さらに、「ひと幕ごとに色を出す典型的な歌舞伎のつくりでありながら、ドラマを追っていける芝居でもある、そのバランスがいい。だからこそ、きっちり歌舞伎ができていないといけないと思います」。お吉にいだく「きれいな世話焼きのお姉さんのイメージにぴったり」の猿之助とのコンビは、約7年半ぶりです。

 

7月の大阪松竹座への思い

 関西・歌舞伎を愛する会に支えられての7月公演、「心強いしありがたい。これまでの夏の大阪松竹座の歌舞伎の面白さを持続しつつ、今回はおまけに親子襲名がつきます」と、笑顔を見せたのは白鸚。襲名披露につきものの『口上』にも「力を入れ、一つの狂言くらいにお見せする、それが歌舞伎俳優」、口上は大事ですと力を入れました。

 

 「昼はこれぞ歌舞伎、誰もがイメージする歌舞伎で、夜はドラマを追っていくお芝居。昼の部、夜の部、まったくカラーの違う演目立てになっており、歌舞伎を知っていただく、初めて触れていただくいい機会です。大阪の七月大歌舞伎にはそういう役割があると思いますので」、愛する会の趣旨に沿った襲名披露興行になるのがうれしいと、幸四郎は語りました。

 

襲名披露興行のこれまで、そしてこれから

 4月の御園座の襲名披露で、中日(なかび)に大道具がお祝いの幕をつくってくれたことを挙げ、「襲名が儀式、形だけのものではなく、手づくりの襲名という気がしてとてもうれしかった」と、しみじみ語った白鸚。幸四郎は歌舞伎座、御園座を振り返り、「大きな名跡を譲る決断をしていただいた父に感謝。うれしい気持ちは力となるエネルギーとして心に留め置き、十代目として何をしていくかが大事。皆様にしかと見届けていただきたい」と、今後への意欲を見せました。

 

 三代同時襲名を「僕のなかでは奇跡」と白鸚が言えば、「現役として舞台に立ち続けることでその可能性が出てくる、つまり、父自身が奇跡の存在」と幸四郎。「倅(八代目染五郎)も芝居が好きで、目標や憧れを持つ世界だと感じ、歌舞伎俳優として生きる覚悟を持ってくれている。それをかみしめながら、舞台に対していこうと思います」。 

 大阪松竹座「七月大歌舞伎」関西歌舞伎を愛する会 第二十七回は、7月3日(火)から27日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で6月5日(火)発売予定です。

 

白鸚、幸四郎が語る大阪松竹座「七月大歌舞伎」
2018/05/12