歌舞伎座
四月大歌舞伎
中村信二郎 改め
二代目 中村錦之助襲名披露
平成19年4月2日(月)~26日(木)
昼の部
一、當年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)
工藤祐経(歌六)を親の敵と狙う曽我五郎(獅童)と十郎(勘太郎)の兄弟は、馬の頭部を付けた跨り棒=春駒というおもちゃの行商人に姿を変え、舞鶴(七之助)の手引きのもと、工藤の館に入り込みます。曽我物の登場人物たちによる、幕あきにふさわしい晴れやかな祝儀舞踊です。二、頼朝の死(よりとものし)
源頼朝の三回忌供養の場。嫡男の頼家(梅玉)が姿を見せないと騒ぐ群衆を、隠密の中野五郎(東蔵)が鎮めたところへ、頼朝の御台所政子(芝翫)の侍女、小周防(福助)がやって来ます。その卒塔婆奉納をとりなした覆面の武士は、畠山重保(歌昇)。落馬が原因と伝えられる頼朝の最期に居合わせた人物ですが、法要に姿を見せなかったために、大名の榛谷重朝(門之助)や藤沢清親(松江)らに訝しがられます。頼朝の死の真相を知る重保は、耐えきれずに幕府の重鎮大江広元(歌六)に心中を吐露しますが...。父への想いや無力な自分の立場に悩む頼家、個よりも幕府の存続を優先させる政子、自責の念に駆られる重保、重保への愛に生きる小周防、そして彼らを冷静に見守る広元。明確に描かれた各人物の心情と、流麗な名せりふの応酬が胸を打つ、真山青果の傑作新歌舞伎です。
三、男女道成寺(めおとどうじょうじ)
道成寺の鐘の供養に現れた、美しい白拍子桜子(仁左衛門)と花子(勘三郎)。奉納の舞いを舞ううちに、桜子の烏帽子が取れ、左近という男の狂言師であることがわかります。おなじみの大曲を男女二人で踊る趣向がユニークな「道成寺物」。仁左衛門と勘三郎の舞踊での共演も見どころです。
四、鬼一法眼三略巻
菊畑(きくばたけ)
劇中にて襲名口上申し上げ候
菊が咲き誇る兵法学者の吉岡鬼一法眼(富十郎)館の庭。奴の智恵内(吉右衛門)は、実は幼い時に別れた鬼一の弟鬼三太で、鬼一が敵方の平家側に与する真意を探るため、さらに秘蔵の兵法虎の巻を手に入れるために、虎蔵と偽った主君の牛若丸(信二郎改め錦之助)とこの館に奉公しています。虎蔵に一途な恋心を抱く鬼一の娘皆鶴姫(時蔵)は、二人の素性を知ってしまい、さらに皆鶴姫との政略結婚を企む笠原湛海(歌昇)にも、そのことが漏れてしまいますが...。菊畑を背景に、菊人形のように美しい登場人物たちが織りなす時代物絵巻。瑞々しい若衆の虎蔵役で二代目を襲名する新錦之助と出演者が、劇中で襲名口上を申し述べます。
夜の部
一、源平布引滝
実盛物語(さねもりものがたり)
九郎助(亀蔵)小よし(家橘)夫婦は、源氏再興の念願かなわず命を落とした木曽義賢の妻で、懐妊中の葵御前(魁春)をかくまっています。そこへやって来たのは、平家方の斎藤実盛(仁左衛門)と瀬尾十郎(彌十郎)。葵御前が産む子を検分するためでしたが、窮した小よしは赤子の代わりに、九郎助が拾ってきた白旗を握った女の片腕を差し出します。それは、実盛が斬り落とした九郎助の娘小万(秀太郎)のものでした。実盛はその時の事情を語り、小万の息子の幼い太郎吉(千之助)に、将来潔く戦場で討たれようと約束します。平家に与しながら源氏再興を願う実盛の、懐の深さと誠実さ。颯爽とした仁左衛門の実盛に胸がすくことでしょう。
二、二代目中村錦之助襲名披露 口上(こうじょう)
叔父である萬屋錦之介の前名である錦之助は、萬屋一門にとって重要な名跡です。二代目としてその名を引き継ぐことになった新錦之助と萬屋一門、幹部俳優が揃って、襲名の口上を申し述べます。
三、双蝶々曲輪日記
角力場(すもうば)
大坂堀江の角力(相撲)小屋。負け無しの大関濡髪長五郎(富十郎)と小兵の放駒長吉(信二郎改め錦之助)の一戦は、意外にも放駒に軍配が上がります。濡髪びいきの山崎屋の若旦那与五郎(錦之助)は、悔しくてなりません。実は、与五郎の恋人である遊女吾妻(福助)に横恋慕する平岡郷左衛門(彌十郎)は、放駒びいき。濡髪は放駒に勝ちを譲ることで、郷右衛門に吾妻の身請けをあきらめてもらうつもりだったのです。今も変わらぬ相撲の風俗がいきいきと描かれた楽しい一幕。信二郎改め錦之助が、きびきびとした放駒と「つっころばし」と呼ばれる頼りなくも憎めない若旦那役を、早替わりでつとめます。
四、新皿屋舗月雨暈
魚屋宗五郎(さかなやそうごろう)
芝片門前の魚屋宗五郎(勘三郎)宅は、屋敷奉公に出ていた妹のお蔦の葬儀で悲しみに包まれています。不義による咎での磯部主計之助(信二郎改め錦之助)によるお手討ちとのことでしたが、お蔦の同僚おなぎ(七之助)の話で、それはとんだ濡れ衣であることが発覚。怒った宗五郎は禁酒の誓いを破って酒を飲み、女房おはま(時蔵)や父太兵衛(錦吾)、店の若い者三吉(勘太郎)らが止めるのを振り切って、磯部邸に怒鳴り込みます。大暴れしながらも、見識ある家老の浦戸十左衛門(我當)のお蔭で斬り捨てを免かれた宗五郎には、さらなる朗報が待っていました。一杯目、二杯目と杯を重ねるに従って形相が変化し、酒乱のていになる宗五郎と、それを必死に止める周囲の人々。善良な庶民の姿がリアルに描かれた世話物の名作です。
