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幸四郎、染五郎が語る「吉例顔見世大歌舞伎」
11月1日(土)から始まる歌舞伎座 「吉例顔見世大歌舞伎」初世松本白鸚三十三回忌追善を前に、松本幸四郎、市川染五郎が、初世白鸚の眠る東京 池上本門寺に墓参し、公演への思いを語りました。
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白鸚、幸四郎、そして染五郎
秋晴れに恵まれた10月17日(金)、初世白鸚の眠る墓を訪れた幸四郎と染五郎は、墓前にて追善興行の報告をし、公演の無事と成功を祈念しました。「自分の夢がかなったと、父の墓前に手を合わせて報告しました」と語った幸四郎。「33年前、私が幸四郎の名前になってから、この日が来るのを夢見て九代目幸四郎として頑張ってきたのだと思います。そういう意味では、息子が私の夢をかなえてくれました」。
そう語る幸四郎の夢とは、父白鸚、当代幸四郎、そしてこの追善興行で初役として染五郎が勤めることでかなう、“稀有で奇跡的な三代の弁慶”です。「これも父の人徳、人柄。本当にありがたく思っています。あとはいい『勧進帳』をお見せすること」と、笑顔で語りました。
高麗屋の弁慶
染五郎は、「41歳で、ほぼ41年間あこがれ続けたものが実現します。これだけ弁慶に対していろいろ思いを巡らすということは、それだけ好きだということだと思いました。夢に終わらせず、実現する日を目指してやっていきたいと思っていたところだったので、(決まったときは)うれしくてうれしくて、たくさん泣きました」と本音を明かし、「染五郎は高麗屋の人間なんだなと皆さんに思っていただける弁慶にしたい」と力強く語りました。
「若いうちから大役に挑戦するのも勉強ですが、いろんな役を勉強してから大役に挑むのも方法の一つ。手に職をつけると一般には言いますが、手に芸をつけることで歌舞伎役者は一人前になります。染五郎を見ておりますと、職人になって来たな、弁慶を勤めるいい時期だなと思います」と、幸四郎。染五郎もうれしいとばかり言っている時期ではないと言い、「やれるときがやるとき。初役の弁慶という域ではないもので、初日を迎えられるように」と表情を引き締めました。
三代がそろう『勧進帳』
今回の『勧進帳』では染五郎の弁慶に対し、父が富樫、叔父の吉右衛門が義経を勤めます。「舞台では親も子もない、富樫として一所懸命勤めたい」と幸四郎が言えば、「父、叔父のいる舞台での弁慶は、自分の中ではとても意味があることで、これ以上の場、これ以上幸せなことはありません」と、染五郎。スチール撮影で衣裳が思いのほか軽くてびっくり、「これだけの衣裳で、あれだけのことを演じることの大変さ」を感じ、かえって弁慶の役の重みを実感したようでした。
平成24(2012)年10月新橋演舞場で、幸四郎の弁慶で太刀持を勤めた金太郎が、今度は染五郎の弁慶の太刀持として出演。「父の弁慶とどれだけ違うか、さらけ出すしかない」と染五郎が話すと、幸四郎は、「大人の芸を見ることで、何となく歌舞伎ってこういうものかと体でわかってくる。わかってくるのは何十年後のことかと思いますが、今は父、祖父の歌舞伎を見せ、心に何を感じるかですね」と、歌舞伎の芸が受け継がれていく現場をかいま見せました。
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歌舞伎座 「吉例顔見世大歌舞伎」初世松本白鸚三十三回忌追善は、11月1日(土)から25日(火)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹にて販売中です。