ニュース
萬次郎、「ギャラリーレクチャー 歌舞伎夜話」に登場
12月8日(火)、歌舞伎座ギャラリー「ギャラリーレクチャー 歌舞伎夜話(かぶきやわ)」第3回が開催され、約100名のお客様を前に市村萬次郎が語りました。
▼
今回も熱心な歌舞伎ファンで満席の木挽町ホールに登場したのは、近年、新作歌舞伎で印象的な役を数多く演じている萬次郎です。話題は早速、今年7月に新橋演舞場で初演された「歌舞伎NEXT『阿弖流為(あてるい)』」へ。恐ろしくも美しい御霊御前は、大変な当り役となりました。
「一番困ったのは化粧ですね、化粧品売り場を見て研究しました。(仕上げまで)慣れても40分はかかる」と素顔で語り、会場は大盛り上がり。一方で、どんなに奇抜な役であっても「古典と同じで、特別なことはないです。台本を読んで、芝居の中でどういう役割なのかを考えるだけ」と、実直な役づくりへの姿勢を明かします。「役を決めるのは息づかい。息を吸う前に思う“気持ち”次第です」と言いながら、二枚目から娘、お姫様、老け役と、即座に演じ分けてみせる様子に、客席からはため息とともに拍手が贈られました。
萬次郎といえば、歌舞伎界きっての「国際派」でもあります。イタリア、ブルガリア、ルーマニア、ドイツなど、身ひとつで挑んだ海外公演も数多く、所作台はもちろん、藤も大量には持ち込めない中でいかに『藤娘』を演じるかという、海外ならではの苦労話も披露されました。
子役時代、明治生まれの少々荒っぽい「三階さん」との思い出や、マイクなしでも通る声の秘訣、趣味を超えて高座にも上がった落語…。飄々とした物腰から次々繰り出される話に、会場は終始笑いに包まれていました。
今後挑戦してみたいお役は?と問われ、「最初の自主公演で勤めた、雲の絶間姫(『鳴神』)。内面で嘘をついている描写がうまくいったら楽しいと思います。新作も、後世に残っていくような芝居に参加していけたらうれしいですね」と答え、止むことない意欲と探究心を感じさせた萬次郎。「長生きしますので、末長く応援してください」との結びに、拍手喝采でお開きとなりました。