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段之、徳松「歌舞伎夜話」で賑やかな夜
5月13日(金)、「ギャラリーレクチャー 歌舞伎夜話(かぶきやわ)」第18回に、市川段之、尾上徳松が登場しました。
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「段之、徳松ふたり語り」と題して開催された今回。開始早々、
段之は、高校の修学旅行で訪れた京都で偶然、国立劇場の歌舞伎俳優研修制度を知ったのが縁の始まり。「今思うと、文化に飢えていたんですね。すぐにでも俳優になりたかったのだけど…」と、学費を稼ごうと1年間働いた先で手腕を発揮、あやうく出世しかけたエピソードで笑いを誘います。
第七期歌舞伎俳優研修を修了した後、「舞台の立派さ、お人柄の素晴らしさ、この人しかいない」と惚れ込んだ市川段四郎の元へ。「老け役は若いうちから研究しておきなさい、と教わりました。若ければせりふ覚えも早いし、いざ勤めることになったとき、スッと役に入れるように…」と、
一方、徳松が歌舞伎俳優になるまでには、長い長い道のりがありました。幼い頃から芝居好きだったものの、神主の資格を取り、ハワイの神社へ赴任。現地の大学へ通ううちに演技の楽しさに目覚め、ニューヨークの演劇学校にも学びました。「でも、日本人の私に勤まる役なんてそうはない。一人きりのアパートで自分の心に正直に聞いたら、『やっぱり歌舞伎がやりたい』って」。
日本へ戻り、縁あって六世尾上松助に入門したのは40歳のときでした。「旦那には『これが最終切符だよ』と言われましたから、この電車を降りるものか、の一心でした。本当にお優しい方でした」。神主は神様と参拝者、俳優は歌舞伎とお客様との“仲取り持ち”。寄り道のようでも「通じるところはあるんです!」と、ときに立ち上がり、身振りを交えての熱弁、そして、美しすぎる英語の発音でも会場を沸かせました。
段之がどこへでも持参するという、炊飯器、ポット、
二人が演出を受けた、蜷川幸雄氏の思い出も語られました。『NINAGAWA 十二夜』ロンドン公演(平成21年3月)で、徳松が神主としてお祓いを行い、現地スタッフにてきぱきと指示を出して蜷川氏に驚かれた秘話を明かすと、段之も、激しくも実り多い稽古場の様子、ほんの数カ月前の『元禄港歌』(1月シアターコクーンほか)でも衰えを見せなかった演出の姿を振り返り、和やかに故人を偲びました。
「歌舞伎の舞台に立てる今が、楽しく幸せ」と、師匠の松助や松也に感謝を込めた徳松。段之は、今だから言える失敗談を披露しましたが、それが物語ったのは段四郎、猿之助との心の結びつきでした。女方
洒脱な語り口、爆笑の渦の中でも、時折深いところを突き刺す言葉。5月13日金曜日の夜しか体験できない特別な時間は、あっという間に過ぎ去っていきました。