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歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕
6月2日(金)、歌舞伎座「六月大歌舞伎」の初日の幕が開きました。
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6月の歌舞伎座は、雨が大きな舞台効果を上げる『名月八幡祭』から始まります。舟から声をかける笑也の美代吉に、すっかり心奪われている様子の松緑の縮屋新助。美代吉の情夫の三次に猿之助、美代吉を贔屓にする旗本の藤岡に坂東亀蔵、四人が初役で挑みます。深川の大祭を背景に江戸情緒もたっぷり。大詰では本水の雨の中、息をのむほどに凄惨な殺しの場が描き出され、雨上がりに昇る月が、なんとも言えない感情を呼び起こす新歌舞伎です。
続いては、初世猿翁の創作に猿翁が磨きをかけ、澤瀉十種に選んだ『浮世風呂』。風呂屋の三助政吉が働く様子を、猿之助が軽妙洒脱な踊りでみせます。政吉に惚れて艶めかしくまとわりつく、女姿のなめくじに塩をかけて追い払うと、今度は常磐津に合わせて老若男女さまざまに、テンポよく踊り分けを見せます。絡んできた若い男たちも軽くあしらい、機嫌よくきめた政吉。風呂上がりのように気分もすきっとする舞踊です。
弁慶生涯一度の契りがもたらした悲劇『御所桜堀川夜討』は、吉右衛門が15年ぶり3度目の弁慶を勤めます。頼朝の命で義経の妻の首を取りに来た弁慶は、智仁勇を兼ね備え、周囲を威圧するほどの大きさで舞台に立ちます。その弁慶が、雀右衛門のおわさの仕方噺で明かされた過去の真実を知り、生まれて初めて声を上げて泣きます。様式美あふれる中に、深い情愛を秘めた弁慶が感情を発露させ、義太夫狂言の面白さがたっぷり詰まったひと幕です。
夜の部は、大坂夏の陣を題材にした重厚な時代物の名作、『鎌倉三代記』から。佐々木高綱は真田幸村、時姫は千姫がモデルになっています。知略に優れた高綱は、初めに時姫にふられる道化役の藤三郎として登場しますが、後半はがらっと姿かたちを変え、立派な武将となって現れます。幸四郎が見事な変化を見せ、物語を厚くしています。愛しい三浦之助のために命まで捨てようとする時姫を雀右衛門、三浦之助の母の長門は秀太郎で、ともに昨年の雀右衛門襲名披露で初演して以来、2度目となります。
両花道が使われる『曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)』。仮花道から子分とともに仁左衛門の御所五郎蔵が、本花道からは門弟を引き連れた左團次の星影土右衛門が登場し、舞台ですれ違います。仁左衛門の五郎蔵は10年ぶり。渡りぜりふが耳に心地よく響き、火花飛び散らせる両者を、歌六の甲屋与五郎が収めます。すっきりとした江戸の俠客の魅力を存分に見せつけ、甲屋では二人の傾城が豪華絢爛な衣裳で現れて、いっそう廓の風情が漂います。愛想尽かしからは話が急展開、思わぬ結末まで黙阿弥のせりふが酔わせてくれます。
夜の部の最後は、幸四郎の駒形茂兵衛と猿之助のお蔦、初顔合わせとなる『一本刀土俵入』です。破門になった相撲取りの茂兵衛が、物憂げな酌婦のお蔦から問われるまま、身の上話をとつとつと語り出します。月日が流れ、再び出会う茂兵衛とお蔦、すっかり変わった二人の人生…。たった2度の邂逅から人生のさまざまな面を見せてしまうところに、芝居の醍醐味が感じられる作品です。「しがねえ姿の横綱の土俵入りでござんす」をはじめ、数々の名ぜりふに彩られた長谷川伸の傑作です。
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地下2階の木挽町広場では、6月1日(木)より、七夕に向けた特別企画として短冊コーナーが設けられています。どなたでも自由に短冊に願い事を書いていただけるもので、すでに多くの短冊が飾られています。風鈴の音も響く木挽町広場は、夏を迎えるにふさわしい季節感あふれる装いとなりました。ご観劇の際には、ぜひお立ち寄りください。
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歌舞伎座「六月大歌舞伎」は6月26日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットWeb松竹スマートフォンサイト、チケットホン松竹で販売中です。