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歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」初日開幕

 

 

 9月1日(金)、歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」が初日の幕を開けました。

 幕開きの『毛谷村』は、12年前のこんぴら歌舞伎で吉右衛門の教えを受けた染五郎が、3度目の六助を勤めます。剣術の試合に勝った又五郎の微塵弾正が不敵な笑みを残して立ち去ると、六助ののどかな田舎家に次々現れた二人が、突拍子もないことを言い出します。六助もこんな稀有な日はないと驚きますが、菊之助のお園が忍びを相手に鮮やかな立廻りを見せてこれまでの事情を語るうち、三人の深いつながりが明らかに。せりふの面白さに場内が何度も沸きました。

 

 続いては『道行旅路の嫁入』 。藤十郎の戸無瀬と壱太郎の小浪がせり上がると、舞台の奥からだんだんと客席へ近づいてくるように見えます。力弥の嫁になりたいという小浪の願い、その願いをかなえてやりたい戸無瀬。はるか向こうに豪華な嫁入りの行列を見ては、たった二人で歩いていく自分たちの姿に不安や寂しさも覚えます。あふれる思いをしっとりとした舞踊で見せました。

 

 昼の部の切、『極付幡随長兵衛』の長兵衛は、吉右衛門の当り役の一つになっていますが、秀山祭で見せるのは初めてです。水野は初役の染五郎。長兵衛は芝居の邪魔をする水野の家臣をいさめ、登場するやいなやすっかりお客様を味方につけます。その長兵衛が男の意気地は捨てられないと、魁春の女房お時、歌六の唐犬権兵衛らが引き止めるなか、命を捨てる覚悟で水野の屋敷に向かいます。

 

 子どもには自分のような商売をさせてくれるなと言い残す長兵衛の、「血の涙を腹の中へこぼす」「人は一代名は末代」という心の底から絞り出した言葉、そして、湯殿で水野に切る啖呵。場内に朗々と響き渡る長兵衛のせりふが、そのままお客様の心にも響きました。

 夜の部、吉右衛門が『逆櫓』の松右衛門を演じるのは、平成20(2008)年の秀山祭以来です。花道から現れた松右衛門は、御大将の召し船の船頭になったと、歌六の権四郎、東蔵のおよしを相手に上機嫌で語ります。しかし、雀右衛門のお筆が訪ねて来てからは空気が一変、激高する権四郎を「頭が高い」と一蹴した松右衛門は、木曽義仲の家臣、樋口次郎兼光と正体を明かして真意を語り始めました。前半は松右衛門、樋口のせりふに酔わされます。

 

 後半は物語が急展開、遠見の演出で見せる逆櫓の稽古や、船頭たちとの立廻りなどのみどころが続き、最後は左團次の畠山重忠の下す裁量に、さすが智勇兼備の力には及ばぬと縄にかかる樋口。権四郎が見せる複雑な思いと温情が芝居に厚みを加えています。

 

 華やかな新清水の花見から始まる『再桜遇清水(さいかいざくらみそめのきよみず)』。雀右衛門の桜姫には魁春の山路、錦之助の千葉之助清玄(きよはる)には染五郎の奴浪平がついており、桜姫と千葉之助の間を取り持とうと山路と浪平が気を利かせます。ここに千葉之助と字が同じ名をもつ清水法師清玄(せいげん)が巻き込まれ、運命が大きく変わってしまいます。

 

 法師清玄は染五郎。厳しい戒律を守り、上人様と崇められてきた法師清玄が、なま物を口にし、桜姫に心奪われ、場面を追うごとに堕ちていきます。浪平と法師清玄の早替りや傘を使った立廻り、面灯りを使った引込み、奴づくしの言い立てなど、お客様を楽しませる趣向もたっぷり。破戒した清玄の最期を焼酎火や驚きの演出で盛り上げ、作者松貫四こと吉右衛門の念願であった歌舞伎座での上演が、見事に形となりました。

 歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」は、9月25日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹にて販売中です。

2017/09/02