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三津五郎、松緑が『松竹大歌舞伎』秋季公演で意気込みを語りました
11月1日(月)~11月25日(木)全国18都市で上演される「松竹大歌舞伎」秋季公演。演目は『浦島』『泥棒と若殿』『身替座禅』と、いずれも歌舞伎を初めてご覧になる方にも楽しく親しみやすい作品です。公演に先立ち、坂東三津五郎、尾上松緑が意気込みを語りました。
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坂東三津五郎
11月秋季公演に参加させていただきます。『浦島』は浦島太郎が玉手箱を開けるとその場で衣裳・鬘がガラッと変わりおじいさんになるという、初めて歌舞伎をご覧いただく方にも良くわかる、そして序幕に相応しい明るい舞踊です。八代目三津五郎も好きだったこの『浦島』を、息子の坂東巳之助が、歌舞伎興行では初めて、踊りを一人で勤めさせていただきます。
二つ目は『泥棒と若殿』。以前平成19年の歌舞伎座團菊祭で松緑さんと上演いたしました。本来なら泥棒が年上で、殿様の方が若いのですが、2人の持ち味を考えて松緑さんに泥棒を勤めていただいています。松緑さんの泥棒は素晴らしく、男の信頼・友情に溢れ、舞台で彼が本当の伝九郎に見えてきました。それがお客様にも伝わって、お陰様で大変好評をいただきました。言葉は荒っぽいけど根は凄く優しくて暖かい・・・松緑さんの持味が最大限に発揮されたのが成功の一因だったのではないでしょうか。今回この『泥棒と若殿』を全国の方々にご覧いただけることを大変嬉しく思っています。
そして『身替座禅』。太郎冠者、奥方は何度も勤めてきましたが、山蔭右京を勤めるのは初めてでございます。『身替座禅』は、松緑さんのおじい様の二代目松緑のおじ様が得意にされていました。父(九世三津五郎)は松緑のおじ様の薫陶を受け、おじ様の踊りはほぼ全部覚えている人でございました。おじ様から父へ、父から私へ、私から松緑さんへ、人と人が歌舞伎の伝統を繋いていくということをあらためて感じています。それにしても、松緑さんのこの体、この大きな目で愛を込められたら恐いでしょうね(笑)。愛が強いほど恐い・・・その恐さを舞台に出してもらいたいなと思っています。
今回の秋季公演は家族のようなメンバーで、全員の心がひとつになった旅になると思います。テーマは"愛"(笑)。舞台からお客様に"愛"が伝わるような舞台ができたらいいなと思っています。「今日のお芝居を観て、何か幸せな気分になっちゃった!」初めて観た方にもそう思っていただけるようなものにしたいと思っております。
尾上松緑
三津五郎のお兄様と巡業に伺うのは初めてですが、その旅で『泥棒と若殿』『身替座禅』を勤めさせていただけるというのは、本当にありがたい事だと思っております。
『泥棒と若殿』は自分でもなかなか無いぐらいに入れ込んで勤めさせていただいたことを覚えています。千穐楽の日に三津五郎のお兄様に「またどこかでこれをやりたいね」と言っていたお芝居を、このような早い時期に再演させていただく事になり、とても嬉しく思っています。前回よりも練り上げて良いものを見せなければいけない、という気持は非常に強いのですが、そればかりが強くなって技巧に走りすぎてしまうと、愛、友情というものが伝わらなくなってしまいます。伝九郎の気持の根子の部分を大事にして勤めたいと思っています。
『身替座禅』では奥方、玉の井を勤めさせていただきます。私は普段立役ですので女方は久しぶりです。諸先輩が何度も勤められてきた明るくて楽しいお芝居です。初役ではありますが、そういう雰囲気を皆様にお見せできたら良いなと思っています。玉の井は、旦那様大好き大好きという少し不器用な奥様という設定です。あまり強さを出し過ぎると、普段の立役での自分が出過ぎてしまうと思うとので、そういうところを気をつけなから、どこまでも女性のハートを持って勤めたいと思っています。また、ゆくゆくは右京もさせていただきたいと思っている狂言ですので、これを機にきっちり勉強したいと思っています。
三津五郎兄さんをはじめとして、気心の知れた方々と全国を巡る公演です。全員の"絆"がお客様に伝わるような公演になれば良いなと思っております。