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猿之助が語る、歌舞伎座『蜘蛛の絲宿直噺』

猿之助が語る、歌舞伎座『蜘蛛の絲宿直噺』

 

 11月1日(日)から始まる歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」第一部『蜘蛛の絲宿直噺(くものいとおよづめばなし)』に出演する市川猿之助が、公演に向けての思いを語りました。

猿之助が語る、歌舞伎座『蜘蛛の絲宿直噺』

 

先陣を切って挑戦を

 歌舞伎座の公演が再開した8月以来、3度目の歌舞伎座出演となる猿之助。「(開演前に)お客様のざわめきが聞こえない」ことに、普通ではないと感じたと振り返りながら、「八月花形歌舞伎」で、開演前のアナウンス後に起こったお客様の拍手について、「かけ声に出せない分、歌舞伎を待っていたという強い気持ち」が伝わったと、感慨深げに語りました。「本当に観たい人が来てくださっている。こちらも応えたくなります」。

 

 『蜘蛛の絲宿直噺』では、久々に早替りに挑戦します。早替りは裏方で人手を多く必要とするため、「(イベント開催に関する)制限が緩和される前はできなかった。舞踊劇なら舞台上でしゃべることも少ないですし、先陣を切ろうと。出演人数を絞らないといけないので、一人で5役やるしかないんですけどね」と、冗談を交えながら、演目を定めた背景を述べました。そして、「笑也さん、笑三郎さんとは8カ月ぶりなんですよ」と、久しぶりの共演を喜びます。

 

猿之助が語る、歌舞伎座『蜘蛛の絲宿直噺』

 『蜘蛛絲梓弦』市川猿之助

五変化の楽しみ

  チームワークが求められる早替りですが、今月も、密集をなるべく避けるため稽古日数が限られています。それでも、「お弟子さんたちとの間に、言葉にしなくても伝わる信頼関係がある。だからできるんです」と、澤瀉屋が得意とする早替りへの自信を見せました。

 

 これまで『蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)』での早替りは数多く勤めてきましたが、今回は『蜘蛛の絲宿直噺』として勤めます。早替りで勤める役のうち、小姓澤瀉と太鼓持彦平は初役。「太鼓持は綱所という、渡辺綱の有名な箇所を踊ります。途中から洒落た曲になって。演じるのは初めてですが、おじ(市川猿翁)の舞台が頭にあるので楽しみです」と目を輝かせます。

 

 早替りで5役を演じ分けることになりますが、役をつくるときの心構えについて、以前、坂田藤十郎から、「舞台に出ていくとき、お客様はその役者を待っているのだから、役としてではなく自分が出ていく」と教わったというエピソードを明かしました。「これは歌舞伎の発想。役になりきった先に、どちらに進むか。役にとことんなりきるか、そのうえで自分を見せるのか。山城屋のおじさん(藤十郎)は究極です。一旦、役になりきったうえで、突き抜けて、自分を見せるということなんだと思う」。

 

将来を見据え、今できることを

 7月には動画配信による「図夢歌舞伎」へ出演し、「これからの歌舞伎俳優は、映像も勉強しなくてはいけない」と感じたという猿之助。「團子がいろいろと映像のことを説明してくれますが、理解できない(笑)。これは、下の世代に託していきたい」と、将来に目を向けつつ、「今は映像や技術が普及するチャンス。配信に関しても、試行錯誤で進むと思います」と、現在を冷静にとらえます。

 

 しかし、やはり芯には、「生で舞台を観るよさを伝えていきたい」という思いがあるといいます。「この状況で何ができるか、模索しています。1時間でできる通し狂言はないか、とか。来月は隼人君や福之助君も活躍しますし、後輩の育成も考えていきたい。コロナがあっても、我々のやることは変わらない」。まずは今できることとして、「とにかく客席を、入るだけの定員で満杯にすることですね」。11月の舞台に臨む心意気を、この一言に込めました。

 歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」は、11月1日(日)から26日(木)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。 

 

※「澤瀉屋」の「瀉」のつくりは、正しくは“わかんむり”です

2020/10/21