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歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」初日開幕

 

 2022年9月4日(日)、歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」の初日が幕を開けました。

 初世中村吉右衛門の俳名を冠し、その功績を讃える「秀山祭」の開催は3年ぶりとなります。13回目を迎えた今回は、二世中村吉右衛門一周忌追善公演として、故人を偲ぶ所縁の演目を上演いたします。歌舞伎座では、引き続き、換気や消毒を徹底するなど感染予防対策に万全を期しながら上演を続けています。

 

 第一部、『白鷺城異聞』で幕が開くと、舞台はその白く美しい姿から“白鷺城”の別名を誇る播磨国の姫路城。本多平八郎忠刻(又五郎)が 天下一の剣豪・宮本武蔵(歌六)を城に招き、宮本武蔵が語った武勇伝を讃え、妻の千姫(時蔵)らとともに賑々しく宴を催します。宴の最中、にわかに千姫が苦しみ出し怪しい影が出現すると、これを物の怪の祟りと推量した宮本武蔵と宮本三木之助(萬太郎)は、城の天守閣へ。すると、目の前に刑部姫(七之助)と秀頼の霊(勘九郎)が現れ、城の人々を脅かす華やかな妖しさで観客を魅了します。勇壮な宮本武蔵が神刀を抜き打ち立ち向かうと、一同はダイナミックな立廻りを繰り広げ、場内の熱気は最高潮となり、大きな拍手に包まれるなか幕を閉じました。

 

 続いては、歌舞伎三大名作の一つ『菅原伝授手習鑑』より、「寺子屋」です。幸四郎と松緑が、松王丸と武部源蔵を日替りで勤めます。初日は、松王丸を幸四郎、武部源蔵を松緑の配役で上演。幕が開き、何かを思い悩む源蔵が花道に登場すると、場内は一気に物語の世界に引き込まれていきます。緊張感あふれる「首実検」の場面や、恩義に報いるために我が子を犠牲にした松王丸の「泣き笑い」など、数々の名場面が観客の涙を誘います。

 

 二日目は松王丸を松緑、武部源蔵を幸四郎の配役。松緑は本来、松王丸を勤める際には、音羽屋系の銀鼠の雪持の衣裳を着用していますが、菊五郎の理解を得、このたびは播磨屋の追善として、黒の衣裳を着用し臨みます。また、当月は歌昇の長男・種太郎が菅丞相の息子菅秀才、次男・秀乃介が松王丸の息子小太郎で初舞台を踏みます。堂々と勤める二人に、客席からは大きな拍手が送られました。

 第二部は、秀山十種の内『松浦の太鼓』から。今回は、白鸚が初役で松浦侯を勤めることでも話題の舞台です。俳人の宝井其角(歌六)が偶然出会ったのは、笹売りに身をやつしている赤穂浪士の大高源吾(梅玉)。其角の俳諧の弟子でもある源吾は、「明日待たるゝその宝船」と付句を残し去っていきます。翌日、句会が催されている大名・松浦鎮信の屋敷に舞台が移り、隣の館から陣太鼓の音が聞こえると、松浦侯が一つ、二つと指折り太鼓の音を数えていく姿に、観客も心高鳴る様子で熱い視線を注ぎます。松浦侯は大名の風格に加えて、愛嬌や高揚さをあわせもつ役柄。白鸚は、松浦侯の裏表のない様子や忠義を重んじる武士の精神をにじませます。

 

 劇中では、白鸚、梅玉、歌六ら出演者による追善口上が披露されました。白鸚は、祖父・初世吉右衛門のもとで芸道の修行をし、その芸を後世に伝えるために「秀山祭」を開催し続けてきた弟・二世吉右衛門について、「兄として誠に誇りと思うことと同時に、たった一人の弟でございますゆえ、別れはいつも悲しい、侘しいものでございます。今回、弟の追善の意味を込めまして、兄として初役にて『松浦の太鼓』を上演させていただきます」と述べました。

 

 続いては、二世吉右衛門の当り役の名場面をつづるひと幕『揚羽蝶繍姿(あげはちょうつづれのおもかげ)』。「籠釣瓶花街酔醒」では舞台一面に広がる花の吉原を背景に、田舎から出てきた朴訥な男の佐野次郎左衛門を幸四郎、あまりの美しさに次郎左衛門が見染める吉原一の花魁八ツ橋を福助、「鈴ヶ森」では江戸の俠客幡随院長兵衛を錦之助、前髪の美しい若衆の白井権八を歌昇、「熊谷陣屋」では熊谷次郎直実を幸四郎が勤め、続く「播磨潟だんまり」は、染五郎演じる佐々木盛綱らがだんまり模様で見せます。幕切れでは熊谷直実の花道での述懐、幕外の引っ込みを見せ、故人の舞台での姿が偲ばれる舞台に、客席は割れんばかりの拍手に包まれました。

 第三部は、『仮名手本忠臣蔵』より、「祇園一力茶屋の場」です。忠義を貫く本心を隠して遊興にふける由良之助を仁左衛門、忠義心をもちながらも身分の低さゆえに仇討ちに加わることができない平右衛門を海老蔵、女方の大役である遊女おかるを雀右衛門が勤めます。仁左衛門は、由良之助のもつ剛柔さを色気たっぷりにみせ、海老蔵の平右衛門、雀右衛門のおかる兄妹の情愛と哀感が観客の心を惹きつけます。登場人物それぞれの本心が明らかになり、人間模様をドラマティックに描き出す密度の高い芝居が展開され、客席から送られる力強い拍手の音がいつまでもやまない初日となりました。

 

  幕切れは、重厚な舞踊劇『藤戸』です。能の「藤戸」を素材に、戦によって子を失った母の悲しみに焦点を当て、命の尊さへの思いが込められています。麗らかな瀬戸内の春。源平合戦の後、領主として備前国藤戸に着任した佐々木盛綱(又五郎)の前に、藤波(菊之助)という女性が現れます。1年前の藤戸の合戦で、敵陣へ馬で渡る浅瀬を教えてくれた漁夫を、無情にもその場で殺した盛綱。その女性は、実は漁夫の母でした。今回、菊之助が母藤波と藤戸の悪龍を演じ、二世吉右衛門の孫・丑之助も浜の童和吉として出演します。二世吉右衛門の祈りへの強い思いを描いた作品を、所縁の配役で上演する舞台にご期待ください。

歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」初日開幕

 

 歌舞伎座場内1階ロビーには、二世中村吉右衛一周忌追善の祭壇が飾られ、懐かしそうに写真を眺めたり、手を合わせるお客様の姿も見られました。

 

 歌舞伎座地下2階の木挽町広場では9月29日(木)まで、SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」として、フードロス商品の販売「KURADASHI」を開催中です。ロスになってしまう商品を格安にて販売していますので、観劇のお帰りの際はぜひお立ち寄りください。

 

 

歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」初日開幕

 歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」は27日(火)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

 

 

2022/09/06