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大阪松竹座「歌舞伎特別公演」初日開幕

 2022年9月8日(木)、大阪松竹座「歌舞伎特別公演」が初日の幕を開けました。

 新型コロナウイルスと共存しつつ、文化芸術活動の機会創出や鑑賞機会を提供、大阪の文化芸術活動の活性化を図ることを目的とする「大阪文化芸術創出事業」の第一弾となる、「歌舞伎特別公演」。中村鴈治郎、片岡愛之助、中村壱太郎をはじめとした上方俳優の面々に市川猿之助が加わり、熱い舞台を繰り広げます。

 

 第一部は近松門左衛門の丸本物の名作、『傾城反魂香』「土佐将監閑居の場」で幕を開けます。鴈治郎勤める又平は、絵の師匠である土佐将監のもとを訪れ、土佐の名字を名のることを願い出ます。生来言葉の不自由な又平に代わり、猿之助勤める女房おとくが切に訴えますが、聞き入れられません。愛之助勤める狩野雅楽之助から舞い込んだ依頼も引き受けることができず、悲嘆に暮れた又平は死を決意しますが…。夫婦の絆が起こした奇跡が胸を打ち、場内は感動に包まれました。

 

 続いては、『男女道成寺』。道成寺物の傑作を男女の踊り分けで楽しむ華やかな舞踊を、愛之助と壱太郎が披露します。愛之助演じる桜子が実は狂言師左近であることがあらわになると、壱太郎演じる花子と、男の姿に戻った左近は、満開の桜のなか華やかな踊りを披露。客席からはその美しさに、思わずため息がこぼれます。次第に二人の形相が変わり、花子と左近が鐘のなかに飛び込み本性を現すと、その迫力あふれる舞台に、客席から熱い拍手が送られました。 

 第二部は、さまざまな分野で功績を残した平賀源内(福内鬼外)作の『神霊矢口渡』から、人気の場面「頓兵衛住家の場」を上演します。一夜の宿を求め訪ねてきた新田義峯にひと目惚れした、壱太郎演じる娘お舟のクドキや、お舟が海老反りになる場面、鴈治郎演じる頓兵衛の“蜘蛛手蛸足”の引っ込みなどみどころが続き、客席は固唾をのんで展開を見守ります。極悪非道な父・頓兵衛と、娘お舟の恋心が対照的なひと幕となりました。

 

 続いて舞踊『博奕十王』では、地獄を舞台にユーモアあふれるやり取りが繰り広げられます。地獄を繁盛させようと六道の辻に出向いた市川青虎演じる閻魔大王が、猿之助演じる陽気な博奕打と出会い、博奕を打ち始めますが、どうしても博奕打に勝つことができません。賽子を使った踊りや、地獄ならではの舞台が目にも楽しく、思わず笑顔になる幕切れに、場内は晴れやかな空気に包まれました。

 第三部は、大坂の夏を舞台にした上方狂言の名作『夏祭浪花鑑』です。主筋である玉島磯之丞を助けようとした末に罪人となっていた、愛之助勤める団七九郎兵衛。「住吉鳥居前の場」では団七が出獄し、むさくるしい罪人姿から颯爽とした浴衣の首抜き姿で登場すると、その変化のさまで場内を魅了します。そこに現れた青虎勤める一寸徳兵衛と団七が争いになるも、壱太郎勤める団七女房お梶が割って入り、二人は兄弟の義を結びます。

 

 続く「三婦内の場」では、鴈治郎勤める釣舟三婦の女房である、上村吉弥勤めるおつぎが夏祭りの支度をするなか、徳兵衛の女房お辰が挨拶にやってきます。愛之助が二役目としてお辰を演じ、義侠心から自らの頬に鉄弓を押し当て火傷をつくる場面はみどころの一つ。団七の舅で、中村亀鶴勤める三河屋義平次の悪計により、磯之丞の恋人である傾城琴浦が窮地に立ったことを知り、団七が義平次を追いかけた先の「長町裏の場」では、歌舞伎の様式美あふれる殺し場が繰り広げられ、夏祭りの熱狂のなか、圧巻の舞台に大きな拍手が送られました。 

 大阪松竹座「歌舞伎特別公演」は11日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2022/09/09