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松緑が語る「松竹大歌舞伎」東コース

松緑が語る「松竹大歌舞伎」東コース

 

 2023年6月30日(金)から全国21会場で行われる、「松竹大歌舞伎」東コースに出演する尾上松緑が、公演について語りました。

4年ぶりの巡業公演

 (公社)全国公立文化施設協会主催による巡業公演「松竹大歌舞伎」が、令和元(2019)年8月、9月に行われた「松竹大歌舞伎」西コース以来、約4年ぶりに開催されます。義太夫狂言の『菊畑』では松緑が得意とする奴智恵内ではなく、鬼一法眼に挑むことが話題です。また、松緑は音羽屋に代々受け継がれる舞踊『土蜘』へ出演します。土蜘の精を演じるのは、この巡業で6度目。 松緑は、「久しぶりに、巡業に行かせていただきます。コロナ禍では東京以外の劇場への出演が一度もなかったので、本当に楽しみにしております。私以下、若い人たちでの公演になります」と、切り出しました。

 

 「『菊畑』はまず舞台一面の菊の花が綺麗で、その絵のような美しさと、登場人物の綺麗さ、かっこよさがみどころです。また、『土蜘』は舞踊のなかでもテクニックが必要な演目で、モンスターである土蜘が正義の味方たちによって退治される。どちらも非常に派手な演目でございますので、初めてのお客様にも喜んでいただけると思います」と、気合をのぞかせます。

 

松緑が語る「松竹大歌舞伎」東コース

 

バイブルである作品

 演目の選定について「登場人物すべてが素敵で、私のバイブルになっている作品ですので、巡業が再開される幕開きに『菊畑』を選ばせていただきました」と、思いを込める松緑。鬼一を演じることに関して「後輩たちも第一線で活躍するようになってきた今、私たちが老け役に回って、一緒に歌舞伎を盛り上げていくことも大切だと思います。10年、20年後に説得力のある鬼一を勤められるよう、今のうちから勉強をして、ゆくゆくは鬼一も智恵内も両方、お客様に喜んでいただける役者になりたいと思っております」と、未来を見据えた挑戦に、期待が高まります。

 

 「『土蜘』は松緑襲名でも勤めさせていただいた演目ですが、なにより、私が巡業に初めて参加したときに(尾上)菊五郎の兄さんがされていたのがこの演目でした。もう30年以上前の話ですが、とても心に残っており、私がリーダーとして巡業公演をする際には、絶対に『土蜘』を上演したいと思っておりました」と、感慨深げに語ります。「まだ何にもできない頃から、菊五郎の兄さんに、手取り足取り教えていただいた大切なお役の一つ。日本全国の皆さまにご覧いただけたらうれしいです」。

 

 各作品の難しい部分を問われると、「『菊畑』の鬼一はほぼ本心を表さない役です。辛抱立役に近く、僕自身は演じるのに若いかもしれませんが、懐の深さをお客様に感じていただけるように。智恵内に対する鬼一の気持ちの消化の仕方は、自分のなかで段取りをつけなければと思います。また『土蜘』は妖気の表現が難しく、さらに蜘蛛の糸を操るテクニックが必要ですが、信頼できるメンバーと相談をしながらつくりたいと思います」と、目標を掲げました。

 

歌舞伎を次の世代へ

 「巡業では終演後に移動をして翌日別の会場で公演をすることもあり、体調の維持も難しいです。ただ、各地で美味しいものを食べ、美味しいお酒を飲むことを楽しみにしております」と、巡業公演ならではの苦労や楽しみがある様子。「智恵内をなさる坂東亀蔵さん、(中村)萬太郎さんは気心の知れているお二人で、それぞれがどういう表現の仕方をされるのか楽しみです。また岡山出身の(坂東)やゑ六くんが、岡山公演では(『土蜘』の)四天王を演じるよう、キャストを組んでおります。僕は彼に倒されますが(笑)彼の勇姿を見ていただけるとうれしいです」と、出演者への温かな眼差しを見せました。

 

 「先輩方の教えを私たちがしっかりと受け止め、後輩たちにまたそれを伝えていく。 古き良きものと、どんどん生まれる新しい歌舞伎の両方を、歌舞伎に携わる人たち全員で次の世代に残すことが、私たちの世代の使命だと思っています」と、真摯な表情を見せる松緑。「久しぶりの巡業公演で声をかけていただけたことを、本当にありがたく思っております。これからも歌舞伎のために力を尽くして参りたいと思います」と、決意も新たに締めくくりました。

 「松竹大歌舞伎」東コースは6月30日(金)から7月31日(月)まで、全国21会場で開催。チケットの詳細は公演情報のお問い合わせでご確認ください。

 

 左より、山根成之松竹株式会社取締役副社長、尾上松緑、岸正人(公社)全国公立文化施設協会専務理事

2023/06/15