歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



扇づくりの難所は、「折り」

 扇づくりの工程は、大きく分けると2つあります。ひとつは、扇骨(せんこつ)と呼ばれる扇の骨を作る工程で、骨屋さんという専門業者の仕事。もうひとつは扇面をつくる工程で、こちらを東扇堂さんが受け持ちます。

「折り型」と呼ばれる、2枚1組の厚い紙でできた型紙で地紙を挟み、一気呵成に折り込んでいく。折りが甘いとゆるみが出て、閉じたとき美しく収まらない。


 扇面作りは、地紙を作るところからスタートします。
まずは和紙を貼り重ねて、地紙に仕立て、裁断。地色を塗る、金箔を押すなどした後に、扇絵師さんに外注し、戻ってきたものに折り目をつけ、扇骨を差し込んで完成です。

 扇面に骨を差すための隙間を作る「中差し」という工程では、薄い地紙に細い小刀のようなものを手際よくスーッと差し込みます。「すごいですね」と思わず声が出ますが…。

「いえいえ、これが一番簡単。素人さんでも2週間やったら、できるようになりますよ。逆に、簡単そうに見える<折り>が難しいですよ。

 折る前に、帯芯(※1)に水を含ませたもので地紙をはさんで湿らせるのですが、気温や湿度によって、乾く時間は15分から2時間と大きな幅があるのです。ころあいを見て折り始めるのですが、湿り過ぎだな、と思っても一度折り始めると途中で止めることができません。今でも気が抜けませんね」


帯芯 おびしん(※1):着物の帯の芯として用いる厚めの布地。

東扇堂に代々伝わる「折り型」。扇には、閉じた状態でも先が少し開く中啓(ちゅうけい)や舞扇など、形やサイズの異なる扇がたくさんある。扇の種類と同じだけ「折り型」もあるそうだ。

折り終わった地紙は、こうして形を落ち着かせる。

扇骨にも種類がたくさんある。親骨と呼ばれる外側の2本の骨には、飾りの彫りが施してある。細長い瓢箪の模様は、弁慶の中啓だけに用いられる。


歌舞伎の逸品

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