歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



歌舞伎のかんざし、いろいろ

三浦孝之さんは、1967年生まれ。曾祖父の代からかんざしを作り続けている家に生まれ、26歳のときこの道に入り4代目を継いだ。歌舞伎のかんざしを手がけるようになったのは、孝之さんの代から。

 洋髪、洋装が当たり前になってしまった現代。着物を自然に着こなし、髪をきりりと結い上げた歌舞伎の女方の扮装は、女性にとってあこがれの姿です。なかでも、黒髪を彩るかんざしは、和装に親しむ女性なら一度は挑戦してみたいアイテムのひとつではないでしょうか。

 歌舞伎のかんざしは、金属製の「平打ち」と布で作られた「つまみかんざし」に大別され、それぞれ専門の職人によって手づくりされています。今回は、歌舞伎の平打ちのかんざしを作る唯一の職人・三浦孝之さんをおたずねしました。


 「金属製のかんざしは、一般には<錺かんざし(かざりかんざし)>、歌舞伎の世界では<平打ち>と呼ばれています。平打ちのかんざしには、飾りの部分に俳優さんの定紋が入ったものや、小短冊の飾りがチラチラと揺れる<びらびらかんざし>など、形や大きさにさまざまなバリエーションがあります。かんざしは、衣裳や小道具と同じように約束事があって、この役柄にはこれという風に決まっていることも多いですね」

 歌舞伎の舞台を見ていると、かんざしを髪から抜いて慕う男の髪を直すシーンも。単に髪を飾るだけでなく、俳優の演技を助ける大切な小道具でもあります。

歌舞伎の舞台で用いられるかんざし。飾りの部分には、俳優の定紋が入ることも多い。右から2番目は、びらびらかんざしの一種で、前(丸)びらと呼ばれる。

歌舞伎で使う玉かんざし。金属の部分のみ三浦さんが作る。中央の大きい玉かんざしは、『仮名手本忠臣蔵 七段目』のお軽が用いるもの。涼しげな翡翠色は、夏の場面で用いるそうだ。

図案の下絵。図案の内容は指定されているが、下絵は三浦さんが描く。日ごろから、動植物のスケッチで鍛錬されているそうだ。

歌舞伎の逸品

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