歌舞伎いろは

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歌舞伎のなかの組紐あれこれ

江口裕之さん。柏屋は、江戸時代から寺や古典芸能にまつわる組紐を作り続け、現在も能狂言、舞踊、寺院、歌舞伎に関する組紐や房物を作っている。裕之さんは、27歳から本格的にこの道に入り、父上から薫陶を受けたそうだ。

 歌舞伎は優れた舞台芸術であることは周知の通りですが、それに加えて古くから伝わる生活文化を生きた形で残す役割も果たしていると言われています。舞台を彩る衣裳やかつらなどは常に高いレベルの質を要求されるため、結果として貴重な手技が現役として保存されているのです。

 組紐という技術もそのひとつ。私たちの日常では帯締や根付けなどごくわずかしか用いませんが、歌舞伎の世界では想像以上に用いられているようです。そこで、江戸時代から組紐や房を作り続けている柏屋をお訪ねし、ご主人の江口裕之さんからお話をうかがいました。

「組紐は簡単に説明すると、繊維素材を使った飾りと言えます。歌舞伎の衣裳では、袖や胸の部分の飾り紐や羽織紐など。それからかんざしの房や金糸を使った花魁(おいらん)の髪飾り、刀の下げ緒(さげお)など、衣裳、床山、小道具などいろいろなところに使われているんですよ。

 たとえば『勧進帳』の弁慶の扮装では、胸についている白い大きなボンボン、これを梵天(ぼんてん)と呼びますが、これは房の一種でうちでも手掛けています。頭に付ける頭巾(ときん)という小さな帽子のようなものの紐もそうですし、腰のあたりにゆるやかに巻いている紐、これは虎の緒と呼ぶのですがそれも組紐です 」



お姫様の衣裳の袖を飾る「姫房(ひめふさ)」。舞台で使用しているうちに房が傷んだため、こちらに修理の依頼があったそうだ。

懐剣(かいけん:護身用の短刀)を入れる袋の紐を組み上げる。この道具は、角台(かくだい)と呼ばれる。重り玉は、息子さんの給食袋の布で作られたもの。

歌舞伎の衣裳に使う組紐で一番時間と手間を要するのがこの素網(すあみ)。本来は金属で作られた防護服だったものを衣裳にする際に銀糸におきかえたと考えられている。『本朝廿四孝』の原小文治などが着用。2人がかりで丸1カ月はかかるとか。

歌舞伎の逸品

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