歌舞伎いろは

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歌舞伎のなかの太鼓

太鼓館室長の越智恵さん。地方の伝統的な祭なども現地へ出向き、太鼓をはじめさまざまな楽器の手配などを取り仕切っている。

太鼓館には、アジア、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカなど世界各国の太鼓がぎっしりと展示されている。収蔵品は600点にものぼるそうだ。

 歌舞伎の舞台ならではの特別感。そのひとつに和楽器の生演奏があります。俳優さんの演技や台詞に、その音が重なることで歌舞伎特有のあの風情が生み出されています。今回は、その音を形づくる楽器のひとつ、太鼓に注目してみます。

 訪れたのは東京の西浅草にある太鼓館。神輿の製作で有名な株式会社宮本卯之助商店が運営する世界の太鼓を集めた資料館です。宮本卯之助商店では、太鼓の製造販売、修理、レンタルなどを行っており、昭和38年からは歌舞伎座の御用達となるなど主な歌舞伎公演の楽器の手配などを担当されています。この太鼓館で室長をされている越智恵さんにお話をうかがいました。

 「歌舞伎で用いられる太鼓の代表格は、手で打つ小鼓(こつづみ)と大鼓(おおつづみ:「おおかわ」とも呼ばれる)、ばちを用いる締太鼓(しめだいこ)の3種類です。これらは舞台に出て演奏する出囃子(でばやし)でご覧になれるので、みなさまもすぐに思い浮かぶと思います。

 それから舞台下手の黒御簾(くろみす)と呼ばれる小部屋で、舞台の進行に合わせて効果音などが演奏されていますが、ここにも太鼓があります。よく知られているのが雪の音。大きな太鼓を<雪ばい>という特殊なばちで叩いて、あの独特な音を出しているんですよ。その他、鳥の声を奏でる擬音笛や雨の音を出す雨うちわ、オルゴールと呼ばれる鉦(かね)
の一種など、黒御簾で使われるさまざまな楽器もこちらで作らせていただいています」

締太鼓。近くで見ると意外と大きい。皮の中央に小さな鹿の皮が貼ってあり、そこをめがけてばちで打つそうだ。

「雪ばい」と呼ばれる雪の音専用のばち。越智さんに叩いていただくと、確かに歌舞伎の舞台から聞こえてくる、あの雪の音がした。

太鼓館には、東京都台東区文化財指定の「市村座」の太鼓も展示されている。

歌舞伎の逸品

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