歌舞伎いろは

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小鼓にクローズアップ

小鼓の構え方。まず左手で調緒を握る。

右肩にのせて、右手で打つ。見ていると簡単そうだが、慣れないと左右が混乱してしまう。

 歌舞伎の舞台で、ポン!という心地よい音色を発している小鼓。どんなしくみで音が鳴っているのか、カーンという音を響かせる大鼓とどんな違いがあるのかなど、引き続き越智さんに詳しく教えていただきます。

 「基本的に、ばちで叩く太鼓は牛の皮、手で叩く太鼓は馬の皮を使っています。小鼓は薄い仔馬(コルト)の皮を用い、大鼓は厚手の成馬の皮を使います。歌舞伎の舞台で小鼓の演奏者がときどき皮の面を口元に引き寄せているのを目にされることもあるかと思いますが、あれは皮に湿気を与えて調子を整えているんです。逆に大鼓は湿気を嫌いますので、演奏前に炭で焙(ほう)じて乾燥させます。形は似ていますが、ずいぶん異なりますね。

 小鼓にかけられている紐は、調緒(しらべお)といって本麻で作られています。これを左手の指にかけて握り、右の肩にのせて、右手で打ちます。調緒をぐっと締めていないとベタベタという変な音になりますが、締めると皮に張りがでてポンといういい音になります。

 大鼓もそうですが高級品の小鼓は、胴の部分に高蒔絵(たかまきえ)が施されます。高蒔絵とは、漆器の模様などの上に漆を盛って高低をつけ、さらに漆、金粉を施して磨き上げた最上級の蒔絵です。菊や竹、貝づくし、波に千鳥などさまざまな古典模様があり、本当に美しいですよ」

大鼓の胴。真ん中に竹の節のようなくびれがあるところが小鼓との違い。

太鼓館に展示されている小鼓の胴のコレクション(下段の3つ)。

歌舞伎の逸品

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