
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。
「川島織物の帯」は極上品の代名詞

川島織物の帯は、着物愛好家の憧れの的。両側の2本は袋帯。中央は三升と海老の図案が入った名古屋帯。成田屋ご贔屓の方は、こんな帯で観劇をなさっても楽しいかも。
◆ 織り上がるまでドキドキ?! 本袋帯を作るには、高度な技術を要する。緞帳と同じように裏側にして、しかも筒状に織っていくため最後にぐるっと表にひっくり返すまで、うまく織れているかわからない。ちょっとでも失敗したら、市場には出せないそうだ。 |
川島織物の帯は、見た目の美しさだけでなく、機能性の面で優れた特長があることをご存じでしょうか。帯の営業を長く担当されてきた天間雅之さんにその魅力についてうかがいました。
「一般に袋帯は表地と裏地を別々に織って縫い合わせた縫袋帯が主流ですが、当社では表と裏を同時に筒状に織り上げていく本袋帯(ほんふくろおび)という織り方で作っています。本袋帯は、縫い合わせる部分がないため厚みが均一で、締める際に身体によく沿い、着崩れしにくいんですよ。
当社の帯には三本線と軍配の印が入っていますが、帯に仕立てる際に関西と関東では違いがあって、関西ではこの三本線を見えるようにします。川島織物の帯ですよ!とアピールするわけです(笑)。一方、関東では三本線をあえて隠して仕立てる方が多い。なんとなくそれぞれの美意識を表していておもしろいですね」
気が遠くなるような丁寧な手作業を積み重ねて作られる川島織物の帯。母から娘へ、何代にも渡って締め続けられるよう人の命の長さを超えた視点で作られているのです。モノに魂が宿ると信じてきた日本人の精神がそこに息づいているように感じました。
機(はた)に向い、一人もくもくと帯を織る職人さん。緻密な作業のため1日数センチしか織れないそうだ。 |
![]() 川島織物の証、三本線と軍配マーク。 |
![]() 川島織物では、花嫁衣装などで締める丸帯も手掛けている。横幅が広く、お仕立てをする前は普通の袋帯の2倍以上はある。営業の西川将之さんに持っていただくと、その幅の広さが一目瞭然。 |
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歌舞伎の逸品
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