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シネマ歌舞伎『スーパー歌舞伎II ワンピース』エース役の福士誠治が語る

シネマ歌舞伎『スーパー歌舞伎II ワンピース』エース役の福士誠治が語る

 10月22日(土)から公開中のシネマ歌舞伎『スーパー歌舞伎II(セカンド) ワンピース』で、エース役の福士誠治に、シネマ歌舞伎と舞台の出演について聞きました。

 ――シネマ歌舞伎になった『ワンピース』、いかがでしたか。

 

 「こうなったかあ」という新鮮な気持ちで拝見しました。舞台ありきで生まれた映像作品ですが、超アップになったり、意外なアングルから撮られていたりで、出演している僕らでも、思いもよらなかったものを見ることができました。もちろん、舞台を観てくださった方には、当時の記憶を思い出すことのできる作品になっていると思います。

 

 ――第三幕、赤犬にやられるくだりで見せた見事な海老反りも超アップに。

 

 ああいった場面をアップで、しかも大画面で見ていただく迫力は、シネマ歌舞伎ならではでしょう。しかし、メイクはけっこう濃くしたつもりでしたが、薄かったんだなと(笑)。猿弥さん演じるジンベエはすごかった! 大画面で見て、あらためて感動しました(笑)

 

 ――歌舞伎には亀治郎の会の『上州土産百両首』(平成22年8月国立劇場)、スーパー歌舞伎Ⅱ『空ヲ刻ム者』(平成26年3月新橋演舞場、同4月大阪松竹座)に続く3作目のご出演です。

 

 これまでも貴重な経験をさせていただきましたが、見得をするのは今回が初めてでした。歌舞伎ならではの技法に挑ませていただいたからか、歌舞伎に出演しているんだという実感はこれまででいちばん強かったかもしれません。

 

シネマ歌舞伎『スーパー歌舞伎II ワンピース』エース役の福士誠治が語る

 見得は、歌舞伎の訓練をしたことがない人間がすると、なんか違う、という違和感を持ってしまうんです。それを少しでもなくしたいと思い、いろいろな方にアドバイスをいただきました。稽古場では澤瀉屋の先輩方、特にお世話になったのが市川右近さんです。「これでどうでしょう」「ちょっと違うね」、と直してくださるんですが、それがもう…。

 

 ――「ちょっと」の違いなのですね。

 

 はい。でも、そのちょっとがいっぱいある。手の上げ方、ひじの角度、顔の位置等々、いろんなところが1センチずつくらい違う。大きな舞台で1センチの違いくらい、と思ったらとんでもない。頭のてっぺんから指先までさまざまなところが1センチずつ違ったらまったく別もの。それがわかり、とても刺激的な時間でした。

 

 公演が始まってからは、楽屋が隣だった隼人君にずいぶん助けてもらいました。仕切りの障子を開けっ放しにして、「これでどう?」「もうちょっとこっち?」と、しつこいくらいに。少しでもいい見得にしたい、そういう気持ちで必死でした。

 

 ――映像では時代劇にもたくさんご出演ですが、そこでの経験とは違ったのでしょうか。

 

 所作や着物のさばき方などは、普段から着物を着てみるといったことが助けになります。が、歌舞伎の技法はそれだけに特化しなければ習得できません。僕にとって、その究極の形は猿之助さんです。芝居のピークで、いい形になり、気迫もマックス…、心技体がぴったりそろうみたいな瞬間がある。そうなると1,500人のお客様全員が猿之助さんしか見ていない。そういった瞬間もシネマ歌舞伎に収録されていると思いますので、注目してみてください。

 

 ――では、福士さんの考える、スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』の魅力とは。

 

 とてもよくできた「いいとこどり」。歌舞伎という日本が誇る伝統芸能と、漫画という、これまた現代の日本を代表するカルチャーの、そのまた代表的作品「ONE PIECE」がすごくうまく融合しています。「いいとこどり」といっても、本当にいいところだけを取ることは、滅多にできることではないと思います。その奇跡が起きている。歌舞伎と漫画「ONE PIECE」の世界観がこんなに合うとは、と多くの人が思ったのではないでしょうか。

 

シネマ歌舞伎『スーパー歌舞伎II ワンピース』エース役の福士誠治が語る

 ――特にどのようなところにそれを感じられますか。

 

 手が伸びたり、火が出たりする作品なのに、キャラクターそれぞれの気持ち、心がすごく伝わってきます。皆が、自分のためではなく、誰かのために行動している。そこに心動かされるのではないでしょうか。

 

 ――最後に、歌舞伎共演3作目で、猿之助さんの印象は変わりましたか。

 

 3作を通じ、とても近しくなったと感じています。同時に演出家として、演技者としての畏怖みたいなものも感じるようになりました。桁違いのスケールを持った、すごい人。そういう気持ちで仰ぎ見てもいます。でも、変わらずバカ話の相手もしてくださる。これからもなにとぞよろしく、と願っています。

 

 

シネマ歌舞伎『スーパー歌舞伎II(セカンド) ワンピース』特設サイト

2016/10/25