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「信州・まつもと大歌舞伎」『切られの与三』開幕

「信州・まつもと大歌舞伎」『切られの与三』開幕

 

 

 6月12日(火)、長野県のまつもと市民芸術館で、信州・まつもと大歌舞伎『切られの与三』が初日を迎えました。開幕前には出演者と演出・美術の串田和美が「登城行列」に登場、また、公開舞台稽古前の囲み取材では初日に向けての意気込みを語りました。

 初日を前にした10日(日)に行われたのが、出演の七之助、梅枝、萬太郎、笹野高史、片岡亀蔵、扇雀と、演出・美術の串田和美が人力車に乗って参加した「登城行列」。松本市民の皆さんが神輿を担ぎ出し、威勢のよいかけ声に沿道からの屋号のかけ声、「お帰りなさい!」の声も加わっておおいに賑やかな行列となりました。今年は七回忌を迎えた十八世勘三郎の神輿も繰り出し、信州・まつもと大歌舞伎をこよなく愛した故人に、あらためて思いを寄せる行列となりました。

 

「信州・まつもと大歌舞伎」『切られの与三』開幕に

 「信州・まつもと大歌舞伎」『切られの与三』 左より、中村鶴松、中村歌女之丞、笹野高史、中村梅枝、中村七之助、串田和美、中村扇雀、片岡亀蔵、中村萬太郎、真那胡敬二

 

 

 松本城に到着した一行は、本丸庭園の特設ステージに登壇。「とうとう6回目になりました」と、声を大にして市民の皆さんの応援に感謝した串田の呼び込みで、壇上に10人が並びました。七之助が「私は皆勤賞、歌舞伎俳優で一番まつもと市民芸術館の舞台に立っているのは僕でございます。この記録はずっと続けていきたいと思っております」と笑顔を見せると、会場から大きな拍手が送られました。

 

 「松本は初めてでございまして、コクーン歌舞伎も初参加でございます」と挨拶した梅枝を、温かい歓迎の空気が包み込み、「また蕎麦三昧の日々が続くと思うと、楽しみでしょうがありません」という笹野のひと言に、会場がどっと沸きました。「松本の歌舞伎には10年ぶりの出演でございます」と切り出した歌女之丞には、たくさんのお帰りなさいの声が飛び、鶴松は「大好きな松本の地でお芝居ができるのがうれしい」と喜びを弾けさせました。

 

 真那胡敬二が「6回のうち4回も来ていると、ちょっと誇らしげな気持ちになりました」と述べたのに続き、「一日一日を大切に、また松本に呼んでもらえるように頑張ります」と意気込みを見せたのは、初参加の萬太郎。亀蔵は、七之助と同じく「僕も皆勤賞です。今年は公演が1カ月早いので助かりますね、涼しくて。でも、舞台は熱いのでよろしくお願いします」と呼びかけてこれまた熱い声援を浴びました。

 

 最後に、松本愛の強さを語った扇雀が、十八世勘三郎七回忌にふれて「七之助さんをはじめゆかりの俳優さん、私を含めてお兄さんの魂を引き継いで、一所懸命舞台を勤めますので、中村屋一門と私たちの心意気をぜひ、舞台で感じていただきたいと思います」と、公演へのご来場をお願いした後、松本の皆さんと三本締めをしてステージを後にしました。

「信州・まつもと大歌舞伎」『切られの与三』開幕

 「信州・まつもと大歌舞伎」『切られの与三』 左より、中村扇雀、中村梅枝、中村七之助、串田和美

 開幕前日には公開舞台稽古も行われました。慣れない立役に再び挑む緊張感とともに、「一つの作品を皆でつくり上げてきたなかで、まだまだ進めるという喜びもある」と語ったのは七之助。その原動力となっているのはやはり、市民の皆さんのようで、「公演の間は、生活の一部に歌舞伎が入ってくれている、そのことがうれしくて、本当に力になる。役者をやっていてよかったなと思えます」と、信州・まつもと大歌舞伎への特別な思いを明かしました。

 

 「来る前から七之助のお兄さんに、お客様が優しいし早く松本でやりたいと聞いていた」という梅枝も、「昨日、お練りさせていただき、大勢の人が来てくださって、本当に町ぐるみでこの歌舞伎を愛してくださっていると感じました。早く舞台に立ち、一所懸命勤める姿を皆さんに見ていただいて、お返しがしたい」と、開幕前からすっかり信州・まつもと大歌舞伎の空気に馴染み、気合も十分な様子を見せました。

 

 扇雀は、10年前の第1回の『夏祭浪花鑑』で、初めて歌舞伎にふれた街の方々の声が徐々に広がっていくのを感じ、「いろんな苦労があったりしながらも、皆で一つのほうに向かって作品をつくり、松本の方々に楽しんでいただけるのを心待ちにしていましたが、きっと、僕たち以上に、市民の皆さんが心待ちにしてくださっていると思います。今回もそのご期待に応えるよう、しっかり頑張って皆で力を合わせて勤めたい」と思いを込めました。

 

 松本での新演出として今回は、与三郎が流された島抜けの場に、市民キャストが出演します。今では恒例となった市民キャスト出演ですが、これは松本で歌舞伎公演を成功させるために知恵を絞ったことの一つだったと串田は振り返りました。そもそも公演ができたことが大変なことで、「しかも6回も、10年も続けたのは奇跡に近い」。だから、舞台に出演する人だけでなく、「声をかけてくれる人、サポーターとして手伝ってくれる人、応援してくれる人全員が市民キャスト」と、串田は感謝の念を隠しませんでした。

 

 まつもと市民芸術館「信州・まつもと大歌舞伎」『切られの与三』は6月18日(月)までの公演、当日券の詳細は、こちらをご覧ください。

 

 

「信州・まつもと大歌舞伎2018」特設サイト

2018/06/12