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山田洋次、獅童、寺島しのぶが語る歌舞伎座『文七元結物語』

獅童、寺島しのぶが語る歌舞伎座『文七元結物語』

 

 2023年10月2日(月)から始まる歌舞伎座「錦秋十月大歌舞伎」『文七元結物語』で、演出を勤める山田洋次、出演の中村獅童、寺島しのぶが公演に向けての思いを語りました。

 

新たな構想による『文七元結物語』

 『文七元結物語』は、山田洋次による、歌舞伎座では初演出の作品となります。「人間を丁寧に描いているのが落語のすばらしさ。子どものころから落語が大好きで、なかでも文七元結は、芝居も合わせて好きでした。16年前、(十八世中村)勘三郎さんと『人情噺文七元結』を上演しました。(舞台版とは別に)映画化の案も出て、楽しみにしていましたが、それがかなわないまま彼はこの世を去ってしまった。その思いをずっと抱いていた僕が、このたび、こういう形で作品をつくれることをとても楽しみにしています」と、山田監督が語ります。

 

 獅童と寺島は過去に「浅草パラダイス」シリーズなどで、舞台共演を重ねていますが、このたび初めて夫婦役を勤めます。「歌舞伎の『文七元結』は(尾上)菊五郎のおじさま、勘三郎のお兄さまが大切になさってきた演目の一つ。1年ほど前にお話をいただき、監督が新たな構想で『文七元結物語』をつくりたいという企画をうかがいました。常にチャレンジ精神をもち、諦めないそのお姿を見て、自分も挑戦させていただきたいと思いました」と、振り返る獅童。

 

 「昨今AIなどが普及して人間同士の関わりが少なくなっていくなか、これから私たちがやる夫婦は、“生きている”という熱をもってお芝居ができるのではと、今からワクワクしています。新しくつくられる『文七元結物語』に没入して、お客様に、この劇場に来てよかったと言っていただけたら」と、寺島が続けます。

 

 

義理人情の生きる世界を

 「しのぶさんとは年齢が一緒で、20代の頃から舞台の後、二人でよくお酒を飲みに行き、そのときから、歌舞伎座で一緒にお芝居ができたらという思いがありました。やるからには、二人の芝居を観に行ってよかったと思っていただけるものにしたいです。日本特有の文化、義理人情のような感情が、芝居のなかではまだ生きているので、そうした世話物の楽しさを若い世代の方にも感じていただけたら」と、獅童が抱負を述べます。

 

 その獅童に対し、「長兵衛の候補として獅童さんのお名前が出たときに、とても良いなと、面白いなと思いました。お会いしたときに、獅童さんとしのぶさんが子どものころから仲良しで、喧嘩友達のようだったという話を、彼がとても楽しくされていて。そんな二人ならいい夫婦になるのではないか。理想的な形になりました」と、山田監督は思いを明かします。

 

 寺島も「父(菊五郎)の『文七元結』を何度も何度も見てきました。そのせりふや芝居が常に頭の中にはありますが、今回は脳を切り替え、新しいものをつくってお客様を楽しませることができたら成功なのかなと。歌舞伎の公演は、ほぼ3日や4日のお稽古で初日が開きます。そんなプロ集団のなかに私が入るので手探りではありますが、覚悟はあります」と、決意を見せました。

 

 

信じるに足る「人間」を描く

 「この作品は、人間の善意について語った物語で、ほとんど完成されたストーリーとして成り立っていると思います。でもそのテーマさえきちんと握っていれば、現代の感覚でもう一度、登場人物たちを見つめ直すことができるのではないか。ストーリーに従い、その精神は守りながら、僕なりに納得のいく形の人間像を構築したいです」と、山田監督は構想を語ります。

 

 会見中は獅童と寺島の息の合ったかけ合いの様子を見た山田監督が、改めて「(役に)ぴったりだと思った」と、評するひと幕も。「『文七元結』は過去に出演したことのないお芝居ですが、今回は新しい芝居をつくるんだという思いで、獅童ならではの長兵衛をつくりあげられたら。現状に満足せず、常にお客様はどうしたら喜んでくださるかを考えています。自分との戦いになりますが、いくつになっても失敗を恐れず革新を追求したいです」と、獅童が結びました。「人間は信じるに足るものだ、という思いを感じて、お客様が席を立てる作品になれば」と、語る山田洋次による、新たな『文七元結物語』に、さらなる期待が高まります。

 歌舞伎座「錦秋十月大歌舞伎」は10月2日(月)から25日(水)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

 

 左より、寺島しのぶ、中村獅童、山田洋次、山根成之松竹株式会社取締役副社長

2023/09/15