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團十郎、南座「吉例顔見世興行」へ向けて

團十郎、南座「吉例顔見世興行」へ向けて

 

 2023年12月1日(金)から始まる南座「當る辰歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」に出演する市川團十郎が、公演に向けての思いを語りました。

11年ぶりに上がる、團十郎のまねき看板

 昨年11月に歌舞伎座での公演を皮切りに始まった、十三代目市川團十郎白猿襲名披露。約1年の時を経て、今年の南座「吉例顔見世興行」で、團十郎の襲名披露と新之助の初舞台が行われます。團十郎という名前に慣れてきたかと尋ねられると、團十郎は、「少しずつ慣れてきました」と笑顔を見せ、「意識は徐々に変わっていますが、歌舞伎のなかで團十郎という名前に重みがあると子どものときから認識していたので、そういう点ではまだなりきれていないと感じます」と、真摯に答えます。

 

 南座「吉例顔見世興行」では、江戸時代から続く芝居の宣伝方法を受け継ぎ、俳優の名前が書かれた「まねき看板」が劇場正面を賑やかに飾ります。團十郎のまねきが上がるのは、平成24(2012)年以来、実に11年ぶり。「子どもの頃、顔見世興行の舞台に立たせていただいたり、たびたび父の芝居を見に行くことがあり、そのときに父・團十郎のまねきが上がっているのを見ていました。今回の南座の顔見世で團十郎という名跡のまねきが上がっているのを、自分のことではないような、懐かしい感覚で見ることになるのではないかと、楽しみにしています」。

 

團十郎、南座「吉例顔見世興行」へ向けて

 

昼の部は初めての方に楽しんでいただける公演を

 昼の部では『双蝶々曲輪日記』、『外郎売』、『男伊達花廓』、『景清』が上演されます。「昼の部は、各演目の上演時間はあまり長くないですが、‟歌舞伎を観た”と思っていただける演目で構成し、初めて歌舞伎を観る方にも楽しんでいただきたいと思っています。『外郎売』では皆様に、歌舞伎座、博多座と演じ続けてきたことによる勸玄(新之助)の『外郎売』の成長を見ていただけたら幸いです。『男伊達花廓』は、(コロナで延期となった)令和2(2020)年の7月の襲名披露興行で上演される予定だった演目です。そのときのチラシをご覧になったお客様の‟あれはどのような演目だったのか”というお気持ちにも応えられればと今回上演することにし、ぼたんを参加させることを考えました」。

 

 『男伊達花廓』と『景清』はいずれも團十郎がつくった作品とのこと。「自分がつくった作品が自分自身の襲名で上演されるということは珍しいことかと思いますので、その珍しさも味わってもらいたい。『景清』は、京都の六波羅を舞台に、平家の無敵の大将の心が変化し、転生、解脱していく様を荒事で見せます。まさに市川團十郎家、荒事の創始者の家の演目として構成し、つくった作品です。荒事の作品を京都の顔見世でご覧いただくことは、意義のあることだと思っています」と、言葉に力を込めます。

 

團十郎、南座「吉例顔見世興行」へ向けて

 

夜の部は古典を中心に

 夜の部で上演されるのは、『仮名手本忠臣蔵』、『口上』、『助六由縁江戸桜』。「夜の部は歌舞伎が好きで、顔見世を毎年見に行っている方が、‟松嶋屋さん来たな”、‟成田屋来たな”と楽しんでいただけるよう」、古典の演目が並ぶと言います。

 

 『助六由縁江戸桜』では、三浦屋揚巻と白玉を、中村壱太郎と中村児太郎が前半日程と後半日程に分けて演じ、髭の意休を市川男女蔵が演じます。若い顔ぶれでの上演に至った理由は、「この襲名披露興行の後、次にいつ『助六』をできるのかを考えたときに、今、先輩たちに習えることをやっていただき、次の世代、勸玄(新之助)の世代の意休や、揚巻を見つけていくことも大事だと思い、未来への希望を込めて、若い顔ぶれに白羽の矢が立ちました」。

 

 團十郎は、「吉例顔見世興行」で見た父の『助六由縁江戸桜』を振り返ります。「3階の角から見ていましたが、助六が出てきて、傘をばっと開いた瞬間に涙が出ました。大きな華をもっているなと、心打たれて涙しました。南座のなかでの1番の思い出で、本当に素敵な、おおらかな、助六だったと思います」と、微笑みを浮かべました。

 南座「吉例顔見世興行」は12月1日(金)から24日(日)までの公演。チケットは11月9日(木)から、チケットWeb松竹チケットホン松竹で発売予定です。

2023/10/13