勘九郎、七之助、獅童が語る「赤坂大歌舞伎」

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 3月8日(金)から始まる、赤坂ACTシアター5周年シリーズ 中村勘九郎襲名記念「赤坂大歌舞伎」の出演者による会見が開かれ、中村勘九郎、中村七之助、中村獅童が公演への思いを語りました。

3回目の赤坂大歌舞伎

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 平成20(2008)年9月、赤坂ACTシアターで『江戸みやげ 狐狸狐狸ばなし』『棒しばり』、翌々年7月には『人情話文七元結』『鷺娘』を上演した「赤坂大歌舞伎」。初めて見る方に見やすいもので、歌舞伎のすそ野を広げることをコンセプトに、十八世勘三郎さんを中心にして始まった公演です。勘九郎は「父は土地に定着した芝居をと言っていました。赤坂は街を挙げて応援してくださる。都会の下町のような感じです」と、赤坂への特別な気持ちを表現しました。

 この劇場の開幕を飾った『トゥーランドット』で主演した獅童は、その初日に勘三郎さんが見に来てくれた思い出を話し、また、勘三郎さんが赤坂と同様に渋谷の街に根づかせたコクーン歌舞伎に触れて「『天日坊』で初めて若手に任されたことは、(自分にとって)昨年の大きな出来事でした。それ以来となる2人との共演が心強い」と初めての「赤坂大歌舞伎」出演への意欲を力強く語りました。

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3人での再演に挑む『乳房榎』
 平成2(1990)年歌舞伎座が、三世實川延若から直々に教わった勘三郎さんの『怪談乳房榎』初演です。七之助は「父は好きな演目だと、必ず僕らに"やりたいだろう、大きくなったらやってよ"と言っていました。これは父が命懸けで教わってつくった、父の愛していた演目です」と紹介。兄弟でシャワーを劇中の十二社の大滝に見立てて写真を撮ったエピソードや、勘九郎が七之助の代役で真与太郎役に出たとき、拍手が来なかったので「縁がないのかと思っていた」ことなど、子ども時代の思い出も披露されました。

 「父は、"今後、(勘九郎と)ダブルキャストでやる"と言っていたので、やり続けたかった役だろうと思います」。その遺志を受け継いでの勘九郎の再演。今回は各部1演目のみの上演とあって、「前回、前々回は大滝の後に円朝として出る演出で、父も僕も出ましたが、今回は大詰の『乳房榎の場』を出します。タイトルの意味もわかっていただけるのでは。また、松井三郎という役を復活させて、ダブル仇討ちをお見せします」と、一昨年8月と同じ3人が再び揃うに当たっての新たなチャレンジも明かされました。

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 とかく早替りや本水の立廻りなど、見た目に派手な演出に目が行きがちですが、「芝居自体、ストーリーがしっかりしていないとただのショーになってしまう」(勘九郎)、「大切なのは人物の描き分け」(七之助)と、勘三郎さんの思いを継ぎ、古典演目としての面白さを追求していくそうです。獅童は自身の磯貝浪江役を前回教わったとおり「世界一いい男と思って舞台に出ていく」ことを目標に掲げました。

 浅草歌舞伎に出演していた時代からにともに勉強を重ねてきた3人が、師と仰いできた勘三郎さんが亡くなった今、挑む「赤坂大歌舞伎」。「これから切磋琢磨して歌舞伎の未来に向けてやっていく、その第一歩。勘三郎のお兄さんが切り開いてくれた道に甘えることなく、歌舞伎を観たことのない方に振り向いていただくことが我々の使命」と、獅童が3人の思いを一つにしました。


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2013/01/22