みどころ


歌舞伎座

八月納涼大歌舞伎

平成19年8月11日(土)~29日(水)


第一部

一、磯異人館(いそいじんかん)

 薩摩藩士がイギリス人を殺傷し、薩英戦争にまで発展した生麦事件から四年。責任を負って切腹した岡野新助の息子精之介(勘太郎)は、イギリス人技師を招いた産業科学工場の集成館で、ガラス創りに励む温厚な職人。弟の周三郎(松也)は、集成館の警護役をつとめる血気盛んな武士です。
 精之介は、藩で外務を担当する五代才助(猿弥)からヨーロッパへの留学を勧められ夢を膨らませますが、琉球国の王女琉璃(七之助)と互いに魅かれ合っています。しかし琉璃は、薩摩藩の人質同然で集成館総裁の松岡十太夫(橋之助)の養女となっている身、イギリス人技師のハリソン(亀蔵)からの求婚を拒否することができません。かたや留学、かたや結婚のためにパリ行きの船に乗り込もうとする二人。そこへ、不当に警護役を免職され脱藩した周三郎が、兄に会うために戻ってきます。が、周三郎を不穏分子と警戒する折田要蔵(家橘)らが駆けつけ、事態は思わぬ方向へ急展開します。
 明治維新前夜、激動する時代を生きた若者たちの悲劇。「明治百年」を記念した懸賞演劇脚本の当選作、二十年ぶりの再演です。


二、越前一乗谷(えちぜんいちじょうがたに)

 越前領主の朝倉義景(橋之助)は、織田信長方に寝返った従兄弟の式部大輔景鏡(亀蔵)らに追いつめられ、妻の小少将(福助)と一子愛王丸を残して自刃します。非業の最期を遂げた義景も壮絶なら、生き残りながらわが子を奪われ、景鏡や羽柴藤吉郎(勘太郎)に引き渡される小少将も地獄。郎党には勘三郎三津五郎らも登場します。
 水上勉が二人の悲愴な人生をテーマに台本を書き上げ、尾上菊之丞が流麗な舞踊劇に仕立てた作品で、本興行では初めての上演となります。


第二部

一、ゆうれい貸屋(ゆうれいかしや)

 桶屋の弥六(三津五郎)は、腕のいい職人ながら、生来のなまけ者。女房のお兼(孝太郎)や家主の平作(彌十郎)がいくら意見をしても、聞く耳を持ちません。
 あまりの体たらくを見かねたお兼は、自分がいなければ弥六もまじめに働くだろうと、しばらく実家に戻ることにします。お兼を引き留めもせず、ふて寝していた弥六が目覚めると、台所の隅に、若く美しい女がうずくまっているではありませんか。聞けば辰巳芸者の染次(福助)の幽霊で、男に騙され恨み死にしたが、今は怨念も果たし終わったところ。弥六に惚れたので女房にしてほしいと言うのです。最初は驚いた弥六も、美女に迫られ悪い気がせず、夫婦同然に暮らし始めます。
 こんな二人が思いついた商売が、幽霊貸し屋。他者への恨みを晴らしたい人のために、幽霊を貸し出そうというアイデアです。屑屋の又蔵(勘三郎)や浮気娘の千代(七之助)など、染次が呼び出した幽霊が続々集まり、商売は大繁盛しますが...。
山本周五郎原作の、痛快でいてあたたかさを感じさせる喜劇。歌舞伎では、実に四十八年ぶりの上演です。

二、新版 舌切雀(したきりすずめ)

 三年前、勘三郎襲名直前の勘九郎のために独創的な『今昔桃太郎』を作・演出し、大好評を得た渡辺えり子が、今度は『舌切雀』に取り組みます。
 洗濯糊を食べてしまった雀の舌を切り落とした意地悪で強欲なおばあさんが、雀のお宿でもらう、つづらに入ったおみやげは......。
 元の昔ばなしが、どう形を変えるのか。辛らつでユニークなえり子版ファンタジーの世界は、見てのお楽しみです。


第三部

通し狂言 裏表先代萩(うらおもてせんだいはぎ)

 足利家転覆をもくろむ悪臣の仁木弾正(勘三郎)らは、廓通いにうつつを抜かすお殿様・頼兼(七之助)を襲うも失敗≪花水橋≫。
 今度は幼い鶴千代君を毒殺しようと、医者の大場道益(彌十郎)に毒薬の調合を依頼します。道益はその報酬二百両を手にしたのをいいことに、日頃から横恋慕していた隣家の下女お竹(福助)に、さらに言い寄ります。父の借金を返すため道益から金を借りたいお竹ですが、そのいやらしさには耐えきれず、逃げ出します。道益の二百両を狙っていた下男の小助(勘三郎)は、道益を殺害してその金を奪い縁の下に隠すと、お竹に罪をなすりつけます≪大場道益宅≫。
 鶴千代の乳母・政岡(勘三郎)は、わが子千松と共に幼君の側に控えています。そこへ栄御前(秀太郎)が来訪すると、弾正の妹八汐(扇雀)、沖の井(孝太郎)らと共に出迎えた政岡は、栄御前が見舞いと称して持参した毒入り菓子を、千松に毒味させ幼君を守ります。奸計の発覚を恐れた八汐は千松を殺害。それでも顔色を変えない政岡を味方と思い込んだ栄御前は、謀略を打ち明け連判状を手渡します。証拠の一巻を手にした政岡ですが、その連判状を鼠がくわえて逃げ、一度は家来の荒獅子男之助(勘太郎)がとらえるものの、結局取り逃がしてしまいます。この鼠は、仁木弾正が妖術をつかって化けたものでした≪御殿・床下≫。
 道益殺しを裁く問注所。お竹が断罪されようとするところへ、細川勝元の家臣・倉橋弥十郎(三津五郎)が動かぬ証拠を小助に突き付け、小助に罪が下ります。そして弾正も、老臣・渡辺外記左衛門(市蔵)の命を賭けた上訴により、ついに細川勝元(三津五郎)によって裁かれます≪問注所≫。
 人気狂言『伽羅先代萩』の世界を「表」に、世話物らしい小悪党・小助の活躍を「裏」の物語として加えた趣向が見どころです。三部を通して、全員が初役尽くし。魅力溢れる狂言が揃った納涼大歌舞伎に、ご期待ください。

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