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「歌舞伎 狂言作者ワークショップ」が開かれました
4月20日(土)、松竹本社の稽古場で「歌舞伎 狂言作者ワークショップ」が行われました。
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松竹株式会社では初の試みとなる狂言作者のワークショップ、100名にのぼる応募者から選ばれた22名が参加されました。
講師として登場したのは竹柴正二さん。三世竹柴金作に入門後、六世中村歌右衛門付きとなりました。現在活躍している12人の東京の狂言作者を束ねています。狂言作者は台本を把握し、各公演に合わせて補綴(ほてつ)や修正、台本の管理を行いますが、若い頃は印刷した台本を出演者全員が持っているということがなく苦労したそうです。現在では、稽古が始まるときには台本があり、公演が終わると修正などを書き込んだ台本が大谷図書館で保存されるので、かなり楽になったとの話がありました。
ワークショップは芝居が開くまでの流れに沿って進められました。同じ演目でも俳優によって演じ方やせりふが異なるため、狂言作者は毎回、台本を確認します。そして、衣裳や鬘(かつら)、床山、小道具など、それぞれの担当のために配役を書き出した「附帳」をつくり、舞台の「道具帳」「平面図」もチェックします。デジタル時代になっても、「伝統文化を守っていくため、よいところを残すため、あえてアナログな作業をやっています」と正二さん。
稽古期間中は、顔寄せで「狂言名題の読み上げ」を行い、稽古を進行しながら、台本や附帳を稽古に合わせて修正したり、名題下俳優の配役を決めて貼りだしたりと大忙しです。さらに、俳優の出勤簿ともいえる「着到板」の名前や、芝居に登場する手紙などを書いたりと、筆を持つ仕事も増えてきます。
「正月の書抜きにはのしを貼ります」「今月の歌舞伎座は出演俳優が多いので、着到板に板を足しています」といったこぼれ話もはさみながら、いよいよ、参加者の皆さんも筆を握るときが来ました。真剣な面持ちでお手本を見ながら、上演中の『盛綱陣屋』に出てくる矢文をしたため、この日のための"特製"小判包みに「金壱百両」と記しました。
舞台稽古からは、舞台や舞台裏で「柝」を打つ仕事が始まります。関係者に幕が開くまでの時間を知らせる「着到止め」「二丁」「廻り」、定式幕を開ける柝、道具転換中の柝、そして幕切れの柝と、正二さんの実演をお手本に、参加者の皆さんも実際に柝を打つ練習をしました。「気を遣うのは"幕切れの柝頭"。俳優さんによって全部違い、これは感覚でわかっていくものです」とのこと。
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その他にもたくさんの狂言作者の仕事についてのお話があり、参加者の皆さんはとても熱心に聞き入りました。質問も多くあがり、正二さんは長年の経験から面白いエピソードを交えて答えていました。直接、柝の扱い方を指導する時間もあり、長時間にわたったワークショップもあっという間。最後は、皆さんが一人ずつ柝の音を発表して終了しました。