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児太郎が「ギャラリーレクチャー 歌舞伎夜話」に登場
11月12日(木)、歌舞伎座ギャラリー「ギャラリーレクチャー 歌舞伎夜話(かぶきやわ)」に、中村児太郎が登場し、満席のお客様を前にトークを展開しました。
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1年2カ月ぶりの立役で「座っているだけでも汗が出るほど緊張している」と言う歌舞伎座の『仙石屋敷』の舞台から、歌舞伎座ギャラリーの満席の木挽町ホールへ駆けつけた児太郎。
『寺子屋』菅秀才、『盛綱陣屋』小四郎、『蘭平物狂』繁蔵など、子役時代の微笑ましいエピソードもありましたが、「中学生くらいまでは生活拠点の一つが歌舞伎座だった」と言い切る舞台裏での子ども時代の話には、お客様もびっくり。名入りのナグリ(舞台用玄能)を下げ歩き、大道具さんと朝のラジオ体操をして、浅葱幕や定式幕の内側に入り込んだり。そして合間は楽屋に入り浸り、そういう毎日が続いていたそうです。
小学二年生で『妹背山婦女庭訓』「吉野川」(平成14年1月歌舞伎座)の「雛流しの場面を見て、毎日、涙していた」ような子だったと語る児太郎は、立役を見て格好いいと思いながらも、「自分が立役をする映像が浮かばない」と、自然と女方を志すことになります。
「祖父(七世芝翫)は六代目菊五郎に一から教わった人で、『藤娘』と『道成寺』だけは教えると言われました」。75日間連続で稽古を受けた『京鹿子娘道成寺』白拍子花子の話では、「花道の出から七三(しちさん)へ行くまでに、2時間くらいかかりました」と、厳しい稽古の様子も話しました。そして、祖父との思い出では、最後の舞台となった日のことも披露。
「(舞台出演)最後の日(平成23年9月新橋演舞場)、『口上』のあと、楽屋で『車引』の音声をモニターで聴きながら、“桜丸を今度教えなきゃね”と言って…」。その翌月、高校三年生の10月に祖父との別れを経て、今では舞台の出演もかなり増え、大きな役に挑戦する機会も多くなりました。「(役が)来てからではなく、何が来ても対応できるようにとは思っています」と、日頃の勉強や心構えについても熱く語りました。
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12月の歌舞伎座『妹背山婦女庭訓』では、52年ぶりとなる「杉酒屋」が上演され、児太郎は橘姫を勤めます。「お三輪、求女、橘姫、それぞれが役をつくっていき、周りの人たちとのキャッチボールがあって『杉酒屋』ができる。それが『御殿』へつながっていくように」と言い、橘姫については「非常に頭の切れる女性で、お三輪が嫉妬に狂うクライマックスへ向かうため、どういう対比を見せたら面白いか」、掘り下げていきたいと意欲を見せました。
お客様からプライベートの様子を聞く質問も上がりましたが、舞台が終わるとすぐに家へ帰って稽古の毎日、「僕は楽しくてやっているんですが、これではトークは受けないですね」と真面目に答え、かえって会場の笑いを誘う場面もありました。
学校生活で打ちこんでいたラグビーの話では、自然とワールドカップの話題になり、お客様からの「日本代表の活躍がどれくらいすごかったのか、歌舞伎に例えて」との質問に絶妙な答えを返し、会場から大きな拍手が上がる一幕も。今回は、真面目に舞台に取り組む若手らしい話しぶりから、舞台に立つ俳優の生の声を通して知る歌舞伎の面白さ、楽しさを感じとっていただけたひとときとなりました。