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巳之助、児太郎が語る、歌舞伎座『ゆうれい貸屋』
2024年8月4日(日)から始まる歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」第一部『ゆうれい貸屋』に出演の坂東巳之助、中村児太郎が、公演に向けての思いを語りました。
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山本周五郎の小説を題材にした『ゆうれい貸屋』。昭和34(1959)年に初演され、平成19(2007)年8月には、十世坂東三津五郎、中村福助、そして十八世中村勘三郎らによって歌舞伎座で初めて上演されました。このたびは、当時、三津五郎と福助が演じた、怠け者の桶職人弥六と元芸者の女幽霊染次を、息子の巳之助と児太郎がそれぞれ初役で勤めます。
父たちの「納涼歌舞伎」で
「この二人で、それぞれの父が演じていたお役でお芝居をさせていただき、さらに(中村)勘九郎のお兄さんがお父さま(十八世勘三郎)がなさったお役で出てくださる。なんだか、思い出の“納涼歌舞伎”を取り戻していくような感覚がいたします。もちろん初めてご覧になる方にも楽しんでいただけるよう、出演者で力を合わせたい」と、感慨深げに話す巳之助。「父は真面目な人だったので、芝居をやっている最中に楽しそうにしていることはそうそうありませんでしたが、この演目を演じていたときは楽しそうにしていました。“また福助と演じたいな”と言っていたので、息子たち二人で叶えられたらと思います」と回顧します。
児太郎は、「父たちが始めた、憧れだった納涼歌舞伎で、二人でひと演目上演できることが非常にうれしい。父たちのお芝居を二人で一所懸命勤め、お客様に楽しかった、また観たいと思っていただけるような、いい舞台にしたいです」と、喜びとともに抱負を述べます。「父は、三津五郎のおじさんとつくった『ゆうれい貸屋』にひと一倍思い入れがあるようです。この演目が上演候補に挙がっていると伝えたら、早速(映像を)見ていました」と、今回監修をつとめる福助の思いにも触れました。
印象的な特別ビジュアルは、「同じ空気を感じながら撮って、いい写真にできたら」と、一緒に撮ることを二人は強く希望したと言い、「児太郎さんの扮装姿を見て、お父様にそっくりだと思いました」と、巳之助が言うと、「うちの父も言っていました。(巳之助が三津五郎に)そっくりだねって」と、児太郎も楽しそうに続けます。撮影には福助も立ち会ったそうです。巳之助は、「今回、色味やエフェクトなど、いろいろと希望をお伝えして、凝ってつくらせていただきました」と、ビジュアルに込めたこだわりにも言及しました。
自分たちの『ゆうれい貸屋』をつくる
自身が勤める桶職人の弥六について、巳之助は、「怠け者のダメ男です。描き方を一歩間違えると、お客様が主人公に共感しづらくなる可能性がある。お客様に納得して楽しんでいただけるよう、自分のなかで整理し、心理の道筋を通して演じたいです」と、役に対しての考えを伝えます。また、「(歌舞伎では)立役の話に女方が相槌を打つパターンが多いのですが、今回は逆ですね」と明かしました。
「染次は、元は辰巳芸者で、江戸時代の気風のいい粋な姉さん。お化けですが、一人の男性を愛する、まっすぐな女性であることは間違いない。そこをしっかり表現できたらいいなと思っています」と、役を読み解く児太郎。「難しいところですが、コメディになりすぎないようにしたい。もともとが面白い作品ですので、そのなかで父や三津五郎のお兄さんがどう表現したかったのかを読み取りながら勤められたら」と、構想を語ります。
「勘九郎さんはもちろん、17年前と同じ役で坂東彌十郎さんが出てくださることも、感謝しかありません。また、市川寿猿さんや市川青虎さんなど、父の代とは異なる配役の顔ぶれにも、私たちの代の『ゆうれい貸屋』らしさが出ているのではないでしょうか。それも本当にありがたいことだと思います」と、巳之助は気持ちを言葉に込めます。児太郎は、「楽しんでいただくことが納涼歌舞伎の一番の醍醐味です。巳之助さんが一緒につくっていきたいと言ってくださった。胸を借りて、どこまでもついていきたいですね」と、意欲あふれる笑顔を見せました。
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歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」は、8月4日(日)から25日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。