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隼人登場「ギャラリーレクチャー 歌舞伎夜話」
12月21日(月)、歌舞伎座ギャラリー「ギャラリーレクチャー 歌舞伎夜話(かぶきやわ)」第4回に、中村隼人が登場しました。
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熱気にあふれる木挽町ホールに登場した隼人は、先日刊行された自身初の写真集についてうれしそうに語りつつ、最初の話題へ。もちろん、スーパー歌舞伎II(セカンド)『ワンピース』です。再現度の高さが話題となったサンジ役の裏話を披露しました。
「小学校低学年の頃から読んでいた漫画です。歌舞伎になって、自分が出演するなんて夢にも思わなかったし、まさかサンジとは…」。原作でも屈指の人気キャラクターを演じるプレッシャーは相当だったようで、「衣裳もスーツと聞いて、股を割るような動きができるだろうか、と。とにかく不安でした」と振り返りますが、アクション俳優顔負けの立廻りを披露し、五右衛門さながらキセルを手に見得をする格好よさは、皆さんもご存じのとおりです。
もう一役は革命戦士イナズマ。「“チョキチョキの実”の能力者なので、ハサミっぽい動きを取り入れて」と、役づくりには原作ファンならではのこだわりもあったようです。大きな見せ場となった本水の立廻りは、1公演で10トンもの水を使用し、一度に大量の水を降らせる“ドカ雪”ならぬ“ドカ水”。「息をヘタに吸うとムセてしまう」ほどのすさまじい水勢にも、「お客様の声援が聞こえて興奮状態なので…何でもできるような気分なんです」。
最近では播磨屋の一座に出演することが多く、吉右衛門や、父錦之助をはじめ多くの先輩のもとで研鑽を積み重ねて充実した一年になったと言います。8月には歌舞伎座で初の大役、『おちくぼ物語』左近少将も勤めました。「シンデレラの王子様のような役ですから、役をいただいたときは、僕で大丈夫かな?と…」と本人は謙遜しますが、会場のお客様は素敵な“王子様”ぶりを堪能されたようです。平安絵巻さながらの華麗な衣裳のなかでも、一番のお気に入りは「鴇色(ときいろ)の衣裳」とのことでした。
先月、誕生日を迎えたばかりの22歳。会場がひときわ沸いたのは、隼人にとっては自然な「現代劇」という言い回しが、同世代の友人には通じなかった、というエピソードです。「みんなが、お芝居は“現代”で当然だと思っていることに気づいて…」と苦笑いの隼人、歌舞伎の世界と若者とをつなぐ案内人として、日々妄想しているというとっておきの“解説プラン”も披露してくれました。
「芝居は客席で見るのと、舞台袖で見るのと、自分が出ていてそばで見るのとでは全然違うんです。今度の『新春浅草歌舞伎』も、僕たちにとっては、先輩方に役を教えていただける貴重な機会。習う機会、そして習ったことをお客様に伝える機会は、少しでも多くつくりたい」との言葉に、客席からは拍手が湧き起こりました。年明け最初の舞台は、その浅草での『三人吉三巴白浪』お嬢吉三。「黙阿弥調のリズムに注目して見ていただきたい」と意気込み、新しい年のさらなる飛躍に期待が高まる一夜でした。