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歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」初日開幕
9月2日(日)、歌舞伎座百三十年「秀山祭九月大歌舞伎」が初日の幕を開けました。
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11回目の「秀山祭」は、初代吉右衛門が当り役とした東吉を、歌舞伎座では襲名披露以来となる梅玉が勤める『金閣寺』で幕を開けました。きらびやかな金閣寺で優雅に碁打ちに興じる松永大膳は松緑。児太郎が初役で演じる捕らわれの身の雪姫は、「雨を帯びたる海棠桃李」と大膳に言わしめる色香で、東吉はどこをとっても絵になるきりっとした所作の美しさで、客席の心をつかみます。
そして、東吉が救い出す慶寿院尼で、4年10カ月ぶりに歌舞伎座に戻ってきた福助を迎えたのは、客席からの万雷の拍手。その拍手の大きさが、待ちわびたお客様の心情をよく表していました。「春永が迎いとや」のせりふから竹本との掛け合いも息ぴったり、「さらば、久吉」で楼閣の幕が降りると、再び力いっぱいの拍手が贈られました。
『鬼揃紅葉狩』は吉右衛門劇団が、昭和35(1960)年に歌舞伎座で初演しました。松羽目に紅葉が描かれて舞台はひと足早く秋景色、錦之助の維茂たちが馬に乗って戸隠山にやって来ます。そこへ現れた幸四郎の更科の前たち。一献傾け、酒の肴にと見せた艶やかな舞、一行が去った後に維茂たちに危険を知らせる女神と男神の踊り、一行を追いかけてきた維茂たちの前で見せる、鬼の姿の毛振りと、変化のある踊りが楽しめる、贅沢なひと幕です。
質見世から始まった『河内山』。吉右衛門の河内山がお数寄屋坊主姿で登場すると、待ってましたとばかりに劇場が沸きました。頼まれごとを請け合って思案顔で花道へ、妙案を思いついたのかぽんと膝を打った姿もきまります。再びの登場は使僧に化けて、うやうやしく迎え入れられた松江邸。姿形は立派ですが、抜け目のない話の運びは相変わらずで、客席に笑いが起きます。事がうまく運んでの帰りがけ、正体を見破られてしまっても笑い飛ばし、開き直ってテンポよく繰り出すせりふが痛快で、賑やかな昼の部の打ち出しとなりました。
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夜の部は『松寿操り三番叟』から。初代吉右衛門の曾孫にあたる幸四郎が、『操り三番叟』の三番叟の部分だけを抜き出し、祖父初世白鸚の追善で初めて踊ったときにこの外題がつきました。軽やかな足さばきが人形らしく、後見の足拍子とも見事に息が合い、見えない糸も見えるよう。糸が絡んでくるくる回ると今度は逆回転、大きな拍手が起こりました。初日は「本日ショ日」の戯れ隈でした。ご覧になる日の隈取にぜひご注目ください。
『俊寛』の浅黄幕が落とされ、岩陰から現れた吉右衛門の俊寛僧都。流された鬼界ヶ島での日々に憔悴しきった様子ですが、仲間が妻をめとってめでたいと喜び、祝うにも酒一つないのを顧みて涙するなど、俊寛の情愛豊かな人柄が感じられます。だからこそ、妻の死に絶望し、島に取り残される娘の身代わりにもなった俊寛。その俊寛が最後に見せた姿がいっそう心を揺さぶります。
能の「羽衣」「石橋」「道成寺」をモチーフに昨年上演した『幽玄』を再構築したのが、新作歌舞伎舞踊『幽玄』です。演奏は太鼓芸能集団鼓童。羽衣伝説を玉三郎の天女と11人の伯竜が厳かに描き出す「羽衣」、数種類の太鼓を20人の奏者が奏でてつくりだした清涼山に、五人の獅子の精が現れる「石橋」と続きます。
最後は、照明の落ちた舞台に演者と奏者が浮かび上がる幻想的な舞台となった「道成寺」です。三人の太鼓奏者と玉三郎の白拍子花子が一体となって繰り出す手踊り、鞨鼓の踊り、錫杖を持っての踊りは、歌舞伎の『娘道成寺』とはテンポも違って目にも耳にも新鮮。後ジテの蛇体となった玉三郎と20人の鱗四天がスケールの大きな景色を見せて幕となりました。
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木挽町広場は芸術の秋、食欲の秋にふさわしい品ぞろえで、土産物も充実しています。ご観劇の折はぜひ、地下2階までお立ち寄りください。
歌舞伎座百三十年「秀山祭九月大歌舞伎」は、9月26日(水)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットWeb松竹スマートフォンサイト、チケットホン松竹で販売中です。