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歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」初日開幕

 

 1月2日(木)、歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」の初日が幕を開けました。

 令和最初の正月。正月飾りで装飾された大間が、お客様を迎えます。幕開きを飾るのは、今回、新たな構成となった『醍醐の花見』。梅玉演じる秀吉が開いた、醍醐寺での花見の宴では舞いが始まり、賑やかな雰囲気に。そこに福助の淀殿、芝翫の智仁親王が登場し、親王から秀頼の後見に尽力するという言葉を聞き、秀吉は安堵の色を浮かべます。最後は皆で桜を愛でながら踊り、年明け最初にふさわしい華やかな演目となりました。

 

 続いて『奥州安達原』。雀右衛門演じる袖萩は、親の意に反して駆け落ちしたため、勘当されていましたが、東蔵演じる父直方の難儀を知り、娘に手を引かれ花道から登場します。盲目になりすっかり姿を変えてしまった袖萩は祭文にことを寄せて、親への思いを語ります。七之助演じる源義家を敵視するのは、芝翫演じる安倍貞任と勘九郎演じる宗任兄弟。それぞれの関係が複雑に絡みあった物語に、ひと幕目とまた違う趣を感じさせました。

 

 新歌舞伎十八番の内『素襖落』。吉右衛門演じる太郎冠者は、伊勢参宮への門出を祝う宴で、楽しくお酒をのみ、酔っぱらってしまいます。最後には、餞別として素襖まで与えられ、上機嫌。又五郎演じる主人の大名某に見つかってはとり上げられてしまうと、素襖を隠しますが、舞い上がるあまり、踊っている最中に素襖を落としてしまいます。慌てて素襖を隠そうとする太郎冠者の姿に、客席からも笑いが巻き起こりました。

 

 河竹黙阿弥の代表作のひとつ『河内山』。当り役といわれる河内山宗俊を白鸚が演じます。金を目当てに頼まれごとを請け負った河内山は、芝翫演じる松江出雲守の屋敷に、身分を偽って乗り込みます。金に抜け目ないところを見せつつも、時計の音に驚くなどの愛嬌も見せ、観客はいつのまにか河内山という人物に惹かれていきます。七五調のせりふがリズムよく痛快で、胸がすっとする昼の部の幕切れとなりました。

 

 夜の部は『義経腰越状』から。頼朝との関係が悪化するなかで、悪臣にそそのかされ、遊んでばかりの義経。見かねた忠臣が名軍師として推薦しようとしたのが、白鸚演じる五斗兵衛盛次です。しかし、大の酒好きの五斗兵衛は、酔っぱらって醜態をさらしてしまいます。「五斗三番叟」とも呼ばれるように、五斗兵衛が泥酔して三番叟を踊るシーンがみどころ。客席も、どんどん展開していく物語に引き込まれました。

 

 澤瀉十種の内『連獅子』は、狂言師右近後に親獅子の精を猿之助が、狂言師左近後に仔獅子の精を團子が演じます。初世猿翁の当り芸をまとめた「澤瀉十種」のダイナミックな振付は、振りの手数が多いことも特徴のひとつで、二畳台を3枚使用し、迫力ある動きを見せます。息がそろった舞踊に、惜しみない拍手が送られました。

 

 1月最後は『鰯賣戀曳網』。三島由紀夫が書き下ろした、人情味あふれる喜劇です。七之助の傾城蛍火にひと目惚れし、恋煩いとなってしまった勘九郎の鰯賣猿源氏。大名しか相手にしないという蛍火に会うため、身分を偽り、揚屋に乗り込みます。座興を求められると、鰯売らしく、魚たちによる不思議な軍物語を披露。客席でも自然と笑いが起こります。予想だにしない結末に、爽快な打ち出しとなりました。

歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」初日開幕

 歌舞伎座「 壽 初春大歌舞伎」は26日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

 

※「澤瀉屋」の「瀉」のつくりは、正しくは“わかんむり”です

 

2020/01/03