ニュース

白鸚が語る、歌舞伎座『双蝶々曲輪日記』

白鸚が語る、歌舞伎座『双蝶々曲輪日記』

 

 10月2日(金)から始まる歌舞伎座「十月大歌舞伎」に出演する松本白鸚が、公演への思いと、『双蝶々曲輪日記』「角力場」について語りました。

 8月、9月に引き続き、四部制の興行形態で上演される歌舞伎座「十月大歌舞伎」。第二部では、白鸚が出演する『双蝶々曲輪日記』「角力場」が上演されます。出演予定であった歌舞伎座「三月大歌舞伎」が新型コロナウイルスの影響で中止となり、期間限定配信用に舞台収録は行いましたが、本格的な舞台出演は1月以来。このように出演期間が空くことは「3歳で初舞台を踏んで以来、初めて」と、感慨深げな面持ちで切り出します。

 

白鸚が語る、歌舞伎座『双蝶々曲輪日記』

 

舞台に命を懸ける

 歌舞伎公演がない間、「もう自分は歌舞伎はできないかな、舞台には立てないかなと思ったこともありました」と、率直な気持ちを吐露した白鸚。「歌舞伎は、衣裳やかつらなど、重うございますから、それに対抗できるだけの体力、気力、声量を要求されます。ですが、やはり心は負けるものかという気持ちです。歌舞伎俳優として、自分の歌舞伎の芸をお見せしなければと思います」。

 

 歌舞伎座での上演は再開されたものの、座席数の減少、かけ声の禁止など、通常とは異なる興行形態が続きます。そのような状況を受け、「これまでもさまざまな状況のもとで公演をやってきましたが、いつもそのときの最高の芸をお見せするという気持ちでやっておりました」と、過去を振り返ります。そして、「来月の舞台に自分の命を懸ける」と語り、久々の舞台出演に対する意気込みを見せました。

 

「角力場」は目で見て楽しい錦絵

 「角力場」の濡髪は思い入れのある役と話す白鸚は、「私が初めて放駒をやったのは、今から60年以上前。今回は、そのとき父がやっていた濡髪です」と、懐かしみます。濡髪が木戸口から出てくる場面では、「(父が演じる)濡髪がとても大きく見えた」と白鸚。「父は、何度稽古をしてもだめだと言うんです。どこがどういうふうにだめかということを言ってくれない。自分で毎日、歌舞伎の勉強をして、稽古をして、舞台を見ていた」と、過去の思い出も披露しました。

 

 「濡髪は、人間関係や世の中の機微がよくわかる人なんです。優しい人だったんでしょうね」と語る白鸚が、どのように濡髪を演じるのか期待がふくらみます。また、今回の配役が決まってすぐ、放駒と与五郎を勤める勘九郎から、「一所懸命やります」と連絡があったとのこと。勘九郎の初舞台にも出演していたという懐かしいエピソードを交えながら、共演を楽しみにしている様子がうかがえます。

 

 濡髪の衣裳にも、自身の細かなこだわりがあるとのこと。「衣裳もそうですし、かつらも大銀杏。よく考えてあり、遊び心が感じられますね。錦絵からとったのだと思いますが、やはり先人たちの工夫だと思います」。感染症対策で、芝居のなかでも密を避けるなどの工夫がなされていることを受け、「最後は芝居も役者も知恵だと思います。ですから、知恵を働かしてセンスよくお見せしなきゃ芝居じゃない。きれいな姿形、うまいせりふ、きれいな声でお客様に楽しんでいただきたいです」。

 

白鸚が語る、歌舞伎座『双蝶々曲輪日記』

 

芝居はお客様と役者が共有する時間

 現在のような情勢を「歌舞伎の勝負」と白鸚。「お客様が楽しんで観ていただける日が来る。歌舞伎役者としてその気持ちはずっともち続けていきたいですし、夢を叶えるという心意気だけはずっともっていたい」。そうすれば、その答えはいずれお客様から出るのでは、と話す白鸚の表情からは、歌舞伎俳優としての決意と覚悟がにじみます。

 

 「お芝居というのは、劇場で幕が開くと役者とお客様だけのもの。その瞬間はそのときしかない。舞台に立つ役者と、舞台をご覧になっているお客様だけが共有できる時間です。今回も、無事に初日を開けて、千穐楽までしっかり勤めたい」と、久々の舞台出演に向けて気を引き締めた白鸚。「歌舞伎座にお越しいただき、楽しんでいただけたら本当に幸せです」と、熱い思いを胸に、穏やかな口調で締めくくりました。

 歌舞伎座「十月大歌舞伎」は、10月2日(金)から27日(火)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。 

 

 

2020/09/17